オーストリア関連

2021年2月21日 (日)

劇画 ヒットラー

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ヒトラーと周囲の人たちとの関係が、本書が描いたような関係であったりやりとりが行われたりしたかどうかはともかく、周囲がヒトラーの妄想を支えていたのは確かだろう。
その妄想のなかにアーリア人を中心とする人種思想があったはずだが、本書ではユダヤ人根絶やスラヴ人奴隷化などはテーマとしては描かれていない。
戦争体験者たる水木氏に、ヒトラーの名で何が行われたのかを描くのではなく、むしろ、周囲の人たちとの関係を中心にヒトラーを描くという本書の描き方には、何か意図があったのだろうか。
飄々としつつ、一面では激昂するヒトラー、冒頭の黙示録の蒼褪めたる馬はヒトラーが連れてきたのか。

水木しげる/著
筑摩書房
https://www.chikumashobo.co.jp/special/hitler/

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2021年2月 9日 (火)

三毛猫ホームズの歌劇場

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いまは行くことのできない欧州を舞台にしていると言う理由で、かつて読んだことはあるのだが、この時期にオーストリアのホームズを読む。
ストーリーの順番としては、ドイツが舞台の「三毛猫ホームズの騎士道」の方が先である。
そして、「三毛猫ホームズの幽霊クラブ」を経て本書となり、「三毛猫ホームズの登山列車」でスイスに向かって帰国となる。

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登場する場所は、ウィーン空港、インペリアルホテル、シュテファン大聖堂(「セント・シュテファン教会」と書かれていることには、今となっては違和感あり)、
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デメル、歌劇場、グリーヒェン・バイスル、
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カプツィナー教会、プラター。
初めて読んだときは、どんな光景なのかがわからずに読んでいたが、何度もウィーンに行ってあちこち歩くと、こうした場所や街の通りのイメージを抱きながら読むことができる。
しかし、グリーヒェン・バイスル、何度か前を通りかかったことはあるのだが、入っていないことに気がついた。
インペリアルホテルも、前はよく歩くが、入る機会はない。

そして、くれぐれもレストランなどにホームズがなぜOKなのかなど、尋ねてはいけない。

赤川次郎/著
角川書店
https://www.kadokawa.co.jp/product/199999149793/

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2021年2月 5日 (金)

John Williams - Live in Vienna/ジョン・ウィリアムズ ライヴ・イン・ウィーン

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ジョン・ウィリアムズが、ウィーンの楽友協会ではじめてウィーン・フィルを指揮した演奏会の映像。
オリジナルとは違った音楽を堪能できる。
2月5日発売の円盤を予約しておいたのだが、発売当日到着、さっそく視聴する。
去年でよかった。
今年だったら、無観客だったろうし、盛り上がりにも欠けただろう。

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01. THE FLIGHT TO NEVERLAND from HOOK
/ネヴァーランドへの飛行 (『フック』から)
02. EXCERPTS from CLOSE ENCOUNTERS OF THE THIRD KIND
/『未知との遭遇』から抜粋
03. HEDWIG’S THEME from HARRY POTTER AND THE PHILOSOPHER’S STONE
/ヘドウィグのテーマ (『ハリー・ポッターと賢者の石』から)
04. THEME from SABRINA
/『サブリナ』のテーマ
05. DONNYBROOK FAIR from FAR AND AWAY
/ドニーブルーク・フェア (『遥かなる大地へ』から)
06. DEVIL’S DANCE from THE WITCHES OF EASTWICK
/悪魔のダンス (『イーストウィックの魔女たち』から)
07. ADVENTURES ON EARTH from E. T. THE EXTRA-TERRESTRIAL
/地上の冒険 (『E.T.』から)
08. THEME from JURASSIC PARK
/『ジュラシック・パーク』のテーマ
09. DARTMOOR, 1912 from WAR HORSE
/ダートムア、1912年 (『戦火の馬』から)
10. OUT TO SEA & THE SHARK CAGE FUGUE from JAWS
/鮫狩り
11. MARION’S THEME from INDIANA JONES AND THE RAIDERS OF THE LOST ARK
/マリオンのテーマ (『レイダース/失われたアーク≪聖櫃≫』から)
12. THE REBELLION IS REBORN from STAR WARS: THE LAST JEDI
/レベリオン・イズ・リボーン (『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』から)
13. LUKE & LEIA from STAR WARS: RETURN OF THE JEDI
/ルークとレイア (『スター・ウォーズ/ジェダイの帰還』から)
14. MAIN TITLE from STAR WARS: A NEW HOPE
/メイン・タイトル (『スター・ウォーズ/新たなる希望』から)
15. NICE TO BE AROUND from CINDERELLA LIBERTY
/すてきな貴方 (『シンデレラ・リバティー/かぎりなき愛』から)
16. THE DUEL from THE ADVENTURES OF TINTIN: THE SECRET OF THE UNICORN
/決闘 (『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』から)
17. REMEMBRANCES from SCHINDLER’S LIST
/追憶 (『シンドラーのリスト』から)
18. RAIDERS MARCH from INDIANA JONES AND THE RAIDERS OF THE LOST ARK
/レイダース・マーチ (『レイダース/失われたアーク≪聖櫃≫』から)
19. THE IMPERIAL MARCH from STAR WARS: THE EMPIRE STRIKES BACK
/帝国のマーチ (『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』から)
20. JOHN WILLIAMS IN CONVERSATION WITH ANNE-SOPHIE MUTTER/ジョン・ウィリアムズとアンネ=ゾフィー・ムターの対談 (BONUS)

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【演奏】
John Williams(Dirigent)
/ジョン・ウィリアムズ(指揮)
Wiener Philharmoniker
/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、
Anne-Sophie Mutte(Geige)
/アンネ=ゾフィー・ムター(ヴァイオリン)
【録音】
Im Wiener Musikverein am 18. und 19. Januar 2020
/2020年1月18日・19日、ウィーン楽友協会

ユニバーサル ミュージック ジャパン
https://www.universal-music.co.jp/john-williams/products/ucxg-1006/

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2021年1月31日 (日)

Neujahrskonzert in Wien 1989

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1989年の"Das Neujahrskonzert der Wiener Philharmoniker"、指揮はCarlos Kleiber、輸入盤。
この年、ヨーロッパは激動の年となった。
「Éljen a Magyar!」は、この年の出来事を予兆していたのだろうか。

Kleiberさんは、1992年のニューイヤー・コンサートも。
http://m-kusunoki.cocolog-nifty.com/blog/2020/01/post-a53e97.html

1. Teil
 Accelerationen-Walzer, op. 234/加速度円舞曲(Johann Strauss (Sohn))
 Bauern-Polka. Polka française, op. 276/田園のポルカ(Johann Strauss (Sohn))
 Bei uns z’Haus. Walzer, op. 361/ワルツ「わが家で」(Johann Strauss (Sohn))
 Die Libelle. Polka Mazur, op. 204/ポルカ・マズルカとんぼ」(Josef Strauss)
 Ouvertüre zur Operette „Die Fledermaus“ /オペレッタ「こうもり」序曲(Johann Strauss (Sohn))
2. Teil
 Künstlerleben. Walzer, op. 316 /ワルツ「芸術家の生活」(Johann Strauss (Sohn))
 Moulinet. Polka française, op. 57 /ポルカ「水車」(Josef Strauss)
 Éljen a Magyar!. Polka schnell, op. 332 /ポルカ・シュネル「ハンガリー万歳!」(Johann Strauss (Sohn))
 Im Krapfenwald’l. Polka française, op. 336 /ポルカ「クラップフェンの森で」(Johann Strauss (Sohn))
 Frühlingsstimmen. Walzer, op. 410 /ワルツ「春の声」(Johann Strauss (Sohn))
  Pizzicato-Polka/「ピツィカート・ポルカ」(Johann Strauss (Sohn) & Josef Strauss)
 Csárdás aus der Ballettmusik der Oper „Ritter Pásmán“/「騎士パズマンのチャールダーシュ」)(Johann Strauss (Sohn))
 Plappermäulchen. Polka schnell, op. 245/ポルカ・シュネル「おしゃべりなかわいい口」(Josef Strauss)
Zugaben
 Jockey-Polka (Polka schnell), op. 278/ポルカ「騎手」(Josef Strauss)
 An der schönen blauen Donau. Walzer, op. 314/ワルツ「美しく青きドナウ」(Johann Strauss (Sohn))
 Radetzky-Marsch, op. 228/「ラデツキー行進曲」(Johann Strauss (Vater))

https://www.wienerphilharmoniker.at/de/shop/article/neujahrskonzert-1989-kleiber/6212

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2021年1月26日 (火)

Schafberg & Wolfgangsee

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2009年刊行の、「シャーフベルクとヴォルフガング湖」。
この地域の歴史もまじえて、その魅力を紹介している。

ザンクト・ヴォルフガングに行き、SchafbergbahnでSchafbergに上がったのは、7年前のことだ。
本書は、そのときに購入してきた。
Schafbergbahnに乗りに
Schafbergbahn その1
Schafbergbahn その2
山頂は雲の中 その1
山頂は雲の中 その2
Schafbergspitze駅 その1
Schafbergspitze駅 その2
11時55分発の列車
下山 その1
下山 その2
下山 その3

本書で、1957年に廃止された「イシェル鉄道」で残ったものは「Liabe kloane Eisenbahn」だけだったと記述されている「Liabe kloane Eisenbahn」は、YouTubeで視聴できる。
映っているのが「イシェル鉄道」だろう。
https://www.youtube.com/watch?v=v4vpy3ehOiI&t=2s
「イシェル鉄道」(ザルツカンマーグート地方鉄道)に関する本は、読んだ。
http://m-kusunoki.cocolog-nifty.com/blog/2016/03/von-salzburg-na.html

文章のタイトルだけ並べておこう。
驚異的な成功を収めた駅
聖ヴォルフガングへの巡礼
塩水風呂と子宝からはじまる
「アルプスで最も美しい景色!」
山岳鉄道の新時代
ザンクト・ギルゲン - ヴォルフガング湖の「モーツァルトの村」
「イシェル鉄道」が皇帝の祝福を受けた
ヴォルフガング湖はフンボルトを感動させた
裕福な「夏の訪問者」のための娯楽
オーストリア最大の三角州
水の信じられないほどの危険

クレメンス.M.ハッター/著
Colorama
http://www.colorama.at/produkte/bildbaende/schafberg-wolfgangsee/

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2021年1月11日 (月)

Wien / Jonas Kaufmann / Wiener Philharmoniker

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日本語解説。歌詞訳付きバージョン。
ただし、日本語解説はケースに入らないのでケースの外にある。
Nachdem ich diese CD gehört hatte, wollte ich wieder gehen nach Wien.

カウフマンの声が重いので、伴奏(と言っちゃ悪いか、Wiener Philharmonikerだし)が、もっと楽しげに演奏しても良かったように思うのだが。

1ロベルト・シュトルツ:「ウィーンは夜がいちばん美しい」
2ルドルフ・ジーツィンスキー:「ウィーン、わが夢の街」
3ハンス・マイ:「今日はいちばん素晴らしい日」
4ロベルト・シュトルツ:「プラター公園では樹々にまた花が咲き」
5ヨハン・シュトラウス2世:喜歌劇「ウィーン気質」より「これだけは許せない~ウィーンの血!」(ウィーン気質のワルツ)*
6ヨハン・シュトラウス2世:喜歌劇「ヴェネツィアの一夜」より「ああ、眺めるだけなら素敵なのだが」(入り江のワルツ)
7ヨハン・シュトラウス2世:喜歌劇「こうもり」より「しなやかな身のこなし、あの魅惑的な腰」(時計の二重唱)*
8ヨハン・シュトラウス2世:喜歌劇「踊り子、ファニー・エルスラー」より「ジーヴェリングのライラックの花」
9ヨハン・シュトラウス2世:喜歌劇「ヴェネツィアの一夜」より「魅力あふれるヴェネツィアよ」
19ヨハン・シュトラウス2世:喜歌劇「ヴェネツィアの一夜」より「僕のゴンドラへいらっしゃい」(ゴンドラの歌)
11フランツ・レハール:喜歌劇「メリー・ウィドウ」より「閉ざした唇に」(メリー・ウィドウのワルツ)*
12エメリッヒ・カールマン:喜歌劇「サーカスの女王」より「星のように美しい、お伽話のような二つの瞳よ」
13カール・ツェラー:喜歌劇「小鳥売り」より「チロルではバラの花を贈ると」
14ヤロミール・ヴァインベルゲル(ヴァインベルガー):喜歌劇「春の嵐」より「君こそ僕の理想の女(ひと)だったはずなのに」
15ヘルマン・レオポルディ:「ヘルナルスの小さなカフェで」
16ハンス・マイ:「人生では与えられるものより失うものが多い」
17ラルフ・ベナツキー:「もう一度グリンツィングに行かなくちゃ」
18ペーター・クロイダー:「お別れには「じゃあね」とささやこう」
19ゲオルク・クライスラー:「死神ってウィーン人に違いない」**

【演奏】
ヨナス・カウフマン(テノール)
レイチェル・ウィリス=ソレンセン(ソプラノ)*
ミヒャエル・ロート(ピアノ)**
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
アダム・フィッシャー(指揮)

【録音】
2019年4月29日~5月6日、ウィーン、カジノ・バウムガルテン
Deutsche Grammophon

https://wien.jonaskaufmann.com/
https://www.sonymusic.co.jp/artist/jonaskaufmann/discography/SICC-2159

 

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2021年1月10日 (日)

完全版 世界の地下鉄

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なんで「ぎょうせい」から出ているのかと思ったら、そういうことだったのか。
なので、鉄道写真集ではない。
「完全版」と銘打ってあるが、記事として記載されているのは、世界の全部の地下鉄ではない。
記事化されなかった地下鉄は、最後にまとめてリストアップされている。
2015年の「世界の地下鉄 ビジュアルガイドブック」の改訂版。

記事には、都市、運行主体、URL、シンボルマーク、路線名と色のリスト、路線図、QRコード、海外にあっては人口・時差・為替レート、データ(開通年・営業キロ・路線数・駅数・運行時間・運賃制度・輸送人員・軌間・電気方式・集電方法・運転保安・最小運転間隔・列車運転線路・導入車両、一部が省略されている年もある)、いくつかの写真がある。
記事とならなかった地下鉄については、都市、運行主体、URL、シンボルマーク、QRコード、データ(開通年・営業キロ・路線数・駅数・運賃制度・輸送人員・軌間・電気方式・集電方法・列車運転路線)が一覧になっている。
加えて全地下鉄について、都市、運行主体、種別、乗務員、開通年、営業キロ、路線数、駅数、運賃制度、輸送人員、軌間、電気方式、集電方法、列車運転線路、掲載ページが表となっている。

このなかで、乗ったことのある地下鉄。
東京/大阪/名古屋/札幌/横浜/神戸/京都/福岡/広島/ロンドン/ベルリン/ハンブルク/ミュンヘン/ウィーン/プラハ/ストックホルム

【アジア】
東京/大阪/名古屋/札幌/横浜/神戸/京都/福岡/仙台/広島/ソウル・仁川/釜山/北京/上海/重慶/広州/香港/台北/台中/高雄/バンコク/クアラルンプール/シンガポール/デリー/ムンバイ/イスタンブール/ドバイ/ドーハ/シドニー
【ヨーロッパ&アフリカ】
ロンドン/パリ/ベルリン/ハンブルク/ミュンヘン/フランクフルト/マドリード/バルセロナ/リスボン/ローマ/ミラノ/アムステルダム/ブリュッセル/ウィーン/アテネ/ワルシャワ/プラハ/ブダペスト/オスロ/ストックホルム/コペンハーゲン/ヘルシンキ/モスクワ/サンクトペテルブルク/カイロ
【南北アメリカ】 ニューヨーク/ワシントン/ボストン/シカゴ/サンフランシスコ/ロサンゼルス/モントリオール/メキシコシティ/リオデジャネイロ/サンパウロ/ブエノスアイレス
103都市の地下鉄データ
世界の地下鉄データ一覧
世界の地下鉄トピックス:世界の地下鉄ランキング/日本製の電車が走る地下鉄/日本が経済・技術協力している地下鉄/リニアメトロ/無人運転(ドライバレス)の地下鉄/集電方式の異なる区間を直通できる地下鉄/剛体電車線/無線信号システム/操舵台車

日本地下鉄協会/著
ぎょうせい
https://shop.gyosei.jp/products/detail/10511

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2021年1月 5日 (火)

戦後オーストリアにおける犠牲者ナショナリズム

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「オーストリアはナチスドイツによって最初に侵略された犠牲国である」史観は従前から知っていたが、その史観のなりたちと「オーストリア」国へのアイデンテティとを掘り下げた労作といえるだろう。
多民族国家オーストリア帝国は「大ドイツ主義」は望まなかったが、帝国が崩壊し、ハンガリーやチェコスロバキアが独立して、残ったところが「オーストリア」となり、「ドナウ連邦」や「ドイツとの統合」も視野に入ったが、連合国はそれを許さなかった。
さらに時代はドイツによる「アンシュルス」をもって独澳が一体化するのだが、第二次世界大戦後は米英仏ソの4ヵ国の分割管理下に置かれ、オーストリア国家条約で「独立」を回復することになる。
そうしたなかでの「独立国オーストリア」の拠って立つところは何か、
本書は、こうした戦後オーストリアの歴史における『「オーストリア国民」国家の形成のありようを明らかにする』ことを目的として編まれている。
著者は、日本の研究者である。

さて、「National」を日本語でどう表現するか、「国民」か「国家」か。
本書では「Nationalsozialismus」を「国民社会主義」としており、「国家社会主義」とはしていない。
さいきんは、こうなのかしら。

P.25の「注」で、「共和国建国一〇〇周年を記念して計画された「オーストリアの歴史の家」博物館」が「二〇一八年一一月一〇日、英雄広場の新王宮に開設された」とある。
今度ウィーンに行けたら、行ってみたい。
https://www.hdgoe.at/

第二次世界大戦後、オーストリアでは「ファシズムの犠牲者」「戦争犠牲者」への「扶助」「援護」が行われていったことが記述されている(用語の定義は、ここには書かない)が、たとえば「四五歳以上で子どもがいない寡婦Aは、仕事を持っていれば月々五〇シリングを受け取ることができ、「扶養年金」について「寡婦Aの例でみると、支給額は二三〇シリング」(いずれもP.82)、「戦争犠牲者援護政策に基づく年金の支給額は(中略)少なくとも月々数十シリング、多ければ一〇〇〇シリングを超える程度」(P.101)など、通貨単位シリングで表記されている。
これがいったいどの程度の貨幣価値を持っているのか、ヒントは「一九四六年当時、パンが一キロ四六グロッシェン、牛乳一リットルは五〇グロッシェン」(P.101)にある。
1シリング(Schilling)は100グロッシェン(Groschen)なので、パン1キロ0.46グシリング、牛乳1リットル0.5シリングということになる。
ユーロ導入にともない、2002年1月1日にシリングは廃止され、1ユーロは13.7603シリングで交換されたのだが、これは戦後のシリング の貨幣価値とは乖離しているだろう。
日本の例で試算してみると、パンは1斤2~300円、牛乳1リットルのパックで200円前後であることから、1シリングは400円から500円ということになるだろうか。
仮に1シリング500円とすると、寡婦Aは月々2万5千円の扶助、年金は11万5千円、戦争犠牲者援護政策に基づく年金は2万数千円から50万円程度ということになる。

P.151の『「アーリア化」によって没取された彼らの財産は、戦後はオーストリア国家の財産として押収され、元の持ち主に返還されることはなかった。ようやく二〇世紀も終わる頃になって、シーレやクリムトの絵画が一部、ナチの略奪美術品として認定され、返還訴訟に発展するなど新たな展開をみせた』は、映画「黄金のアデーレ」を思い出させる。
http://m-kusunoki.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/post-d7ca.html

P.279以降の「第10章 戦没者記念碑――戦争をめぐる記憶の相克」は、日本の各地にある「忠魂碑」や「靖國」を考えてしまう。
日本のような神格化ではないだろうが、「英雄」と括ることは、顕彰の形として通底するものがあるような気もする。

2019年にウィーンに行ったときに、「負の遺産」にまつわるところを歩いてみた。
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「Denkmal der Opfer der Gestapo」(ゲシュタポ犠牲者のための記念碑)(Schwedenplatz):1985年11月1日
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「Holocaust-Mahnmal」(ホローコースト記念碑)(Judenplatz):2000年10月25日
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「Denkmal für die Verfolgten der NS-Militärjustiz」(ナチ時代の澳人の脱走兵や兵役拒否者祈念の碑)(首相府と大統領府の前):2014年
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「Mahnmal gegen Krieg und Faschismus」(戦争とファシズムに反対する記念碑)(Helmut-Zilk-Plat):1988年
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http://m-kusunoki.cocolog-nifty.com/blog/2019/05/post-d261b3.html
http://m-kusunoki.cocolog-nifty.com/blog/2019/05/post-7fdafb.html

P.288以降の、Burgtor(ブルク門)にある「「英雄記念碑」「オーストリア解放闘争で犠牲となった者を追悼する」記念碑は、Burgtorは何度も通るのだが、気づかなかった。
今度行ったら、よく見ておこう。

オーストリアに行きはじめたのは21世紀になってからで、すでに10回以上になるのfだが、何度もオーストリアに行って感じる「寛容」さ、とくに2015年に行ったときの、中央駅や西駅に集まった難民たちの間を歩き、カリタスが支援する姿を見たときの印象は、P.303からの、『二〇世紀後半の「オーストリア国民」を成り立たせていた排他的な価値は一九八〇年以降、第二の問題系を通じて批判的省察を迫られ、その結果他者に対する寛容の精神を醸成する、一見すると民主主義的な政治文化の進化につながったようにみえた。そしてその分だけ「オーストリア国民」としての成熟度もましたように感じられた』のだとしたら、やはり上っ面しか見ていなかった、ということでもある。
2019年に見た「負の遺産」の設置時期を見れば、その証左ともいえるかもしれない。
また、この時代において、ほんとうに「負の遺産」として存在しているのか、機能しているのか、という問いかけでもあるだろう。
そして、「第三帝国」のその後の歴史への向き合い方というところでは、ドイツの(西と東の時代も含めて)向き合い方と、さらに日本の私たちの向き合い方も含めて考えていかなければならないのだろう。

はじめに
序章 オーストリア国民をめぐる二つの問題系――「八」のつく年をめぐって
 1 ドイツ国民か、オーストリア国民か
 2 オーストリア・ファシズムからナチズムへ
 3 過去との付き合い方を問う視角
 4 犠牲者国民のスペクトラムと本書の構成
第I部 犠牲者国民という射程
第1章 第二共和国の誕生と「犠牲者テーゼ」――「オーストリア国民」意識の勝利
 1 「オーストリアの主権に関する宣言」と「モスクワ宣言」
 2 レンナー政府による国家再建の試み
 3 国家統一への道
 4 1955年以後の展開
第2章 「ファシズムの犠牲者」を創出する――抵抗運動の犠牲者
 1 顕彰制度にみる「犠牲者性」
 2 犠牲者を「扶助」すること
 3 権利の獲得に向かって
 4 政治的被迫害者同盟の全国組織化
第3章 「ファシズムの犠牲者」を周縁化する――人種・信仰・国民的帰属による迫害の犠牲者
 1 人種・信仰・国民的帰属が理由で迫害された人びとへの補償
 2 新犠牲者扶助法の制定にみる格差の論理
 3 犠牲者イメージのヴァリアント
 4 犠牲者の統合を求めて
 5 「加害者性」と「犠牲者性」の共存
第4章 「戦争犠牲者」をめぐる国民福祉の論理――「神話」と「実体」の間
 1 「戦争犠牲者」とは誰か
 2 戦争犠牲者援護法にみる国民福祉の領域
 3 犠牲者国民を創り出す
 4 競合する「犠牲者」たち
第II部 犠牲者ナショナリズムの陥穽
第5章 元ナチの再統合と「犠牲者国民」の形成――抑圧される記憶
 1 ナチズムの遺産
 2 フィーグル政権による「脱ナチ化」政策
 3 免罪される青年世代
 4 交錯する恩赦=忘却のディスコース
第6章 占領軍当局による戦犯追及――英、米、仏の実践
 1 四連合国占領下オーストリアにおける戦争犯罪者訴追
 2 米軍当局の訴追方針
 3 仏軍当局による戦犯訴追の実態
 4 英軍当局の戦犯訴追システム
第7章 オーストリア人民裁判による戦犯追及と国民の境界――内発的冷戦の構図から
 1 戦争犯罪の射程
 2 オーストリア人民裁判の制度と実践
 3 ナチ・戦争犯罪と国民的正義
 4 国家反逆罪をめぐる人民裁判
 5 新たな「国家反逆者」像の構築と冷戦
第III部 犠牲者国民の記憶空間
第8章 反ファシズム闘争をめぐる想起の文化――マウトハウゼンを例に
 1 抵抗運動の記憶?
 2 記念施設化されるマウトハウゼン
 3 記念される過去
 4 反ファシズムの記憶の周縁化
第9章 戦没者の記憶を継承する――オーストリア黒十字協会の活動を例に
 1 戦没者をめぐる記憶のポリティクス
 2 想起の文化の担い手「黒十字」
 3 戦間期黒十字の思想と活動
 4 1945年以後の黒十字と戦没者
 5 「戦争犠牲者」イメージの再構築
 6 「戦争犠牲者」観の変容
第10章 戦没者記念碑――戦争をめぐる記憶の相克
 1 戦間期における戦没者記念碑の建設
 2 国家による英雄顕彰
 3 「われわれの犠牲者」を想起する
 4 愛国的な兵士像
終章 終わりなき犠牲者ナショナリズム―― 第三の問題系に向けて
補論 ブルゲンラント・ロマ迫害の二重構造――近代=国民の境界をまたぐ人びと
 1 ブルゲンラント・ロマ――国民的ディスコースの再検討
 2  オーストリアにおけるロマの人びと
 3 ブルゲンラント・ロマの歴史
 4 「オーストリア国民」国家の中のロマ
 5 再生産される「異者」
おわりに
初出一覧
参考文献一覧
人名・事項索引

水野博子/著
ミネルヴァ書房
https://www.minervashobo.co.jp/book/b505233.html

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2020年12月 9日 (水)

「愛らぶモーツァルト」と「隣のベートーヴェン」

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Eテレの「旅するためのドイツ語」に登場するモーツァルトくんとベートーヴェンさん。
https://www.nhk.jp/p/german-tv/ts/M9GML751KJ/
独語版があるといいなあ。
んにゃ、この日本語を独語にしてみる練習をすればいいのかしらん?

201028_011  201028_012
愛らぶモーツァルト
小澤一雄/著
ポトス出版
https://potosu.thebase.in/items/10371428

201028_021  201028_022
隣のベートーヴェン
小澤一雄/著
ポトス出版
https://potosu.thebase.in/items/25880001

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2020年11月30日 (月)

kotoba 2020年秋号 ベートーヴェン 1770-2020

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1770年12月16日、ボン生まれ、まもなく200歳の「楽聖」を、様々な執筆者がさまざまな角度から探る特集。

有賀誠門さんも取り上げて欲しかった。
なぜって、有賀さんは「有賀誠門の Ludwig van Beethoven's Symphonies」で、Vol.1で交響曲5番、1番、7番を、Vol.2で2番、3番、6番を、マリンバ、チェロ、ピアノで演奏なさったのである。
http://m-kusunoki.cocolog-nifty.com/blog/2017/11/post-bf88.html
http://m-kusunoki.cocolog-nifty.com/blog/2018/04/post-f9cc.html
4番、8番は、行かなかった。
https://www.t-bunka.jp/stage/1423/
9番は、どうするのだろう。

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これは聴いた。
Complete Symphonies / Andris Nelsons / Wiener Philharmoniker
http://m-kusunoki.cocolog-nifty.com/blog/2020/11/post-dd6137.html

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これも、昔聴いた。
バーンスタイン/ベートーヴェン:交響曲第9番~ベルリンの壁崩壊記念コンサート~
http://m-kusunoki.cocolog-nifty.com/blog/2010/02/9-a883.html

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他にも、「ウェリントンの勝利」が入ったCDがある。
http://m-kusunoki.cocolog-nifty.com/blog/2008/10/post-6207.html

特集以外の記事のなかに映画評論家の連載があり、この人は日頃からSNSなどでは差別に反対するスタンスであれこれ書いている人なのだが、その人が明らかに差別的なニュアンスの言葉を使っている。
その言葉の前に「いわゆる」とつけているので、単なる一般名詞ではないことは承知しているのだろうが、であれば「いわゆる」ではない言い方を示しているかと思ったら、そうではなかった。
この言葉がオープンに使われていた時代は、この人は10代前から10代前半にかけてであることが、背景にあるのかもしれない。

I ベートーヴェンを奏でる
 仲道郁代 ベートーヴェンの人間讃歌――生と死のはざまを越えて
 佐渡裕 僕が「第九」を振る理由
 古澤巖 だからベートーヴェンは難しい
 山下洋輔 ベートーヴェンとフリージャズ
 村治佳織 祈りの音楽家が後世に遺した想い
 宮本笑里 人間性を秘めた音楽が見せる風景
 ベートーヴェン年譜
II ベートーヴェンとその時代
 坂本龍一×小沼純一 
 音楽革命の正体をあばく――私的ベートーヴェン論
 平野 昭 楽聖の森を歩く
 池辺晋一郎 社会の流れと音楽――時代の中のベートーヴェン
 片山杜秀 ベートーヴェンの耳の革命
 島田雅彦 革命か反抗か――ナポレオンやヘーゲルと同時代を生きたベートーヴェン
 佐藤賢一 オペラ《フィデリオ》が映し出すヨーロッパとその時代
 藤田俊之 今に生きる偉大なる音楽家の世界精神
III ベートーヴェンの新しい楽しみ方
 千住明 寄り添う音楽の本質
 菊地成孔 映画の中のベートーヴェン
 かげはら史帆 いま、ベートーヴェンについて知るべき5つのこと
 新垣隆 すべての人間に音楽の悦びをもたらした楽聖
 西原  ベートーヴェンの学識
 伊熊よし子 スクリーンで描かれた楽聖
 横川潤 「文豪」はベートーヴェンがお好き?――崇拝派から嫌悪派まで
 原典子 ベートーヴェンがいる暮らし――テーマ別CD案内

集英社
https://kotoba.shueisha.co.jp/backnumber/041.html

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