ヒトラーと周囲の人たちとの関係が、本書が描いたような関係であったりやりとりが行われたりしたかどうかはともかく、周囲がヒトラーの妄想を支えていたのは確かだろう。
その妄想のなかにアーリア人を中心とする人種思想があったはずだが、本書ではユダヤ人根絶やスラヴ人奴隷化などはテーマとしては描かれていない。
戦争体験者たる水木氏に、ヒトラーの名で何が行われたのかを描くのではなく、むしろ、周囲の人たちとの関係を中心にヒトラーを描くという本書の描き方には、何か意図があったのだろうか。
飄々としつつ、一面では激昂するヒトラー、冒頭の黙示録の蒼褪めたる馬はヒトラーが連れてきたのか。
水木しげる/著
筑摩書房
https://www.chikumashobo.co.jp/special/hitler/
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