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2020年9月18日 (金)

なぜ人と人は支え合うのか 「障害」から考える

200912_101  200912_102
著者は、ずっと以前に読んだ、2003年に刊行されたバナナを書いた渡辺さん。
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167838706

本書は裁判の前に書かれたていて、事件を探るという内容ではない。
けれど、障害のある人やあれこれ思索する人の「障害者」「障害」「やまゆり」ではなく、障害者と衝撃的な関係をもった経験を持つ「健常」な人による「障害者」「障害」「やまゆり」が、新鮮に落ちてきて、「障害者」「障害」「やまゆり」のことを考える手がかりになっている。
それは、このシリーズがターゲットにしている読者層を想定しながら書かれているからだろう。
そのことが、タイトルに現れている。
ただし、「解」はない。
そして、あらためてCILの歴史をふりかえることができた。

本書を手にしようと思ったのはもうひとつ理由があって、それはコロナ禍である。
この冬からずっとコロナ禍で、最近はゆるゆるになってきたものの、外に出ることが控えられ、劇場の公演や美術館での展覧会が中止となってしまっていた。
美術館が再開されても、多くが日時指定の予約をしなければならず、「あ、絵を見たい気分」と思い立ったが吉日でふらっと美術館に行ってみるという楽しみは、今はまだない。
「計画」「予定」に縛られている。
そのことが、さまざまなサービスを組み合わせて「自立」の暮らしをつくっても、それは「計画」「予定」を前提としているのであれば、そうしたサービスを利用せずとも暮らしていける人の気ままさには遠く及ばないのだろうなとも考えてしまったのであった。

振り返れば、相当長い間「障害者」「障害」とかかわる仕事をしてきた。
じっさいに仕事をしていた時期は、すでに国障年を過ぎて、資金が潤沢にあった頃だが、それでも親たちが作業所を作っていったり、『「青芝」のメンバーが引っ越してくるんだってよ』と、職場が身構えていたこともあった。
提供できるものがほとんどないなかでの「措置」の時代から、「運動」の時代を経て、紆余曲折を経て成立した「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(障害者総合支援法)による「支援」が行われる時代となってはいるが、疑問を持つことは、多々ある。
例えば、利用者とサービスを提供する事業者は対等な関係とされ、障害者が自らサービスを選択して、契約を交わした後にサービスを利用するというプロセスをふむが、その契約内容は事業者が示した契約内容であって、利用者が契約内容を示して事業者が応じるものではない。
これで、「対等」と言えるのかしら?

障害者総合支援法の基本理念を規定した第一条の二の条文を、段落を加えて書いておこう。
障害者及び障害児が日常生活又は社会生活を営むための支援は、
・全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、
・全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、
・全ての障害者及び障害児が可能な限りその身近な場所において必要な日常生活又は社会生活を営むための支援を受けられることにより社会参加の機会が確保されること及び
・どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと
・並びに障害者及び障害児にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものの除去に資することを旨として、
総合的かつ計画的に行わなければならない。

職場に某大学の福祉実習生が来ているのだが、「こんな夜更けにバナナかよ」は知らなかった。
「映画はどうでもいいけど、本は読んでおけ」と、命じておいた。

はじめに
第1章 障害者は本当にいなくなったほうがいいか
第2章 支え合うことのリアリティ
第3章 「障害者が生きやすい社会」は誰のトクか?
第4章 「障害」と「障がい」—表記問題の本質
第5章 なぜ人と人は支え合うのか
あとがき

渡辺一史/著
筑摩書房
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480683434/

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