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2020年7月 3日 (金)

オーストリア・スイス 現代史

20200624_001
今から35年前の1985年、東欧革命より前の刊行なので、冷戦を背景とした歴史的な文献と言えるのかもしれない。
したがって、クルト・ヴァルトハイムは国際連合事務総長(1972年1月~1981年12月)として登場するが、1986年7月8日から1992年7月8日までの大統領であったことや戦前に突撃隊に所属していたことは、出てこない。
いまの大統領が緑の党出身であることなどは、当時は想像もできなかっただろう。

P.50の写真のキャプションは「暗殺直前のオーストリア皇太子夫妻」、そしてP.51に「一九一四年六月オーストリア皇太子夫妻がサライェボでボスニアの一青年に暗殺された・・・」とあるが、暗殺されたフランツ・フェルディナントはオーストリア=ハンガリー帝国の皇位継承者(Thronfolger)と呼ばれるが、皇太子(Kronprinz)とは呼ばれないはず。

「国家喪失期のオーストリア」中、P.140からアンシュルス下のオーストリアの抵抗に触れているが、先日読んだ「Österreicher im zweiten Weltkrieg」でも、「ÖSTERREICHER IM WIDERSTAND / 抵抗するオーストリア人」と抵抗運動がとりあげられ、社会民主主義者、共産主義者、個人、カトリックなどの運動が紹介されていた。
http://m-kusunoki.cocolog-nifty.com/blog/2020/05/post-dca8ed.html

そして、アンシュルスのもとで、SPÖもÖVPともに収容所に囚われたり抵抗運動を行なっていたことが相互理解をすすめ、。戦後の「大連立」時代を形作ったが、その経験は、21世紀には伝えられているのだろうか。

スイスとなると、政治的な歴史はほとんど知らないことがわかる。
婦人参政権が1971年と遅かったことは有名だが、それ以外の政治状況となると、1847年に内戦があったこと(P.279)、その後紆余曲折を経て1874年憲法が制定され、本書刊行当時もベースであったこと(現在は1999年憲法)、政治的にはかなり保守的であること(反動的と言ってもいいかもしれない)、は知らなかったし、ウィリアム・テル伝説や「永世中立」が一人歩きしてしまっているようだ。
「一国」としてのスイスは、かなり綱渡りの歴史だったようだ。
2002年9月10日に国民投票の結果を受けて国連に加盟したが、本書では当然触れられていない。

オーストリアとスイス
オーストリア
 ハプスブルク帝国期のオーストリア
 第1共和国の成立
 第1共和国の没落と合邦
 国家喪失期のオーストリア
 占領下のオーストリア
 独立と第二共和制の発展
スイス
 スイス連邦の成立まで
 スイス連邦の発展
 大戦間のスイス
 現代のスイス

矢田俊隆/著
田口晃/著
山川出版社
https://www.yamakawa.co.jp/product/42250

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