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2019年9月11日 (水)

スターリニズム

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わかっているようで、しかし、それぞれの論者によって定義づけられているのでますますわかりにくくなっている「スターリニズム」、これはいったい何なのだ?
著者グレイム・ギルは、「スターリニズム」を「経済」「文化」「社会」「政治」の「四つの相貌」から、その起源や内実を論じ、コンパクトにまとめている。
ガチガチの全体主義だろうとの先入観であまり眼がいくことのなかった、中央と地方との関係、中央による地方や下部組織に対する統制の弱さという指摘は興味深い。
むろん中央の統制が弱いことが民主的だったとか自由だったとかいうことにはならず、地方は地方でミニ・スターリニズムの社会だったのだろう。
国土の広さとインフラの未発達が影響していたのかもしれない。
だとしたら、シベリア抑留でのそれぞれの地方での思惑とモスクワの思惑とは、どのようなものだったのだろうか。
そしてこの指摘は、「全体主義」を考える上で、ファシズムやナチズムと同じようにスターリニズムを置いていいのかという問題提起にもなるだろう。

この中央と地方との関係は、ベトナム戦争でも論じられたことがあることを思い出した。
「ハノイ対話」でのプレイク事件(1965年2月7日のベトナム中部のブレイク空軍基地に対する解放戦線による攻撃)をめぐるやりとりで、「我々はなぜ戦争をしたのか―米国・ベトナム 敵との対話」で触れられている。
アメリカ側は、ブレイク攻撃を北ベトナムによる挑発であり、ハノイからの指令に基づく攻撃であるととらえたのだが、「ハノイ対話」においてはベトナム側から現地司令官が計画し実行された作戦であると言明された。
当時の解放戦線側においては米軍が持っていたよう指揮命令系統・手段は整備されておらず、「自分たちと同じような指揮命令系統を解放戦線も持っていたはずで、すべてハノイからの指令によって作戦が行われた」とするアメリカの判断はとんでもない誤解であるというやりとりであった。
http://m-kusunoki.cocolog-nifty.com/blog/2013/10/post-1d9f.html

スターリニズムの要素は、P.86に7点がまとめられている。
(1) 制度上は高度に中央集権化された司令経済システム。大衆動員と重工業発展の最大限の重視を特徴とする。
(2) 初期の段階では、大々的な流動を特徴とした社会構造。なかでも特筆すべきは、かつての下層階級を権力と特権ある地位に引き上げた高水準の社会的流動。その後、社会は安定し、等級や地位、厳格な上下関係が支配する社会構造へと帰結。
(3) 文化的、知的領域では、すべてが指導部の定める政治的目的に奉仕すべきであるとされ、文化的、知的活動の全分野が政治的監視を受けた状態に置かれる。
(4) 当地の手段としてテロルを用いた個人独裁。ここでは、政治組織はほとんど独裁者の道具以上の何物でもなかった。
(5) 国家にとって重要と見なされる限りで、あらゆる生活領域が政治化される。
(6) 権力の中央集権化と、その反面に見られた中央からの日常的統制の著しい弱さ。その結果、実際には日々の活動が厳格な統制を受けず、組織化もされていないシステムが出来上がった。
(7) 初期の革命的な価値規範は、保守的で現状維持の志向によって取って代わられた。
そして「四つの相貌すべてを備えたスターリニズムの登場にとって最も重要だったのは、一九二〇年代末から一九三〇年代初頭にかけての「上からの革命」と一九三〇年代後半のテロルであろう」(P.89~90)とする。
さらに「後進性」と「指導者たちの個人的選択」についての検討となる。

「大テロル」の論考で、NKBDに関して、「存在意義を強く主張しようと躍起になっていた」(P.44)ことで、「敵の摘発を通じて今まで以上に目立つ存在となるばかりか・・・大勢の指導機関として君臨できるから」(P.47)「大テロル」で役割を担ったというように記されているが、NKBD長官のエジョフやベリヤが「大勢の指導機関として君臨」することを考えていた、ということなのだろうか。

ソ連邦が崩壊しロシア連邦となったからといって、「スターリニズム」がなくなったわけではないだろう。
現代ロシアとスターリニズムとの関係も、考えていかなければならない課題なのだと思う。
そして、「経済」「文化」「社会」「政治」の「四つの相貌」から嫌韓な我が国を見たとき、どんな評価をすることができるだろうか。
さらに、奇しくもきょうは9.11。
以前ノーマンメイラーは、アメリカが全体主義に向かいつつあると言ったようだし、鶴見さんもどこかでアメリカの知人にそのようなことを言われたことがあるとか言っていたが、「アメリカ・ファースト」なアメリカは、どう評価できるだろうか。

第二版への序文
判例
第1章 スターリニズムの歴史的起源?
 1 ロシアの後進性
 2 レーニン主義
 3 人格的要因
第2章 スターリニズムの確立
 1 「上からの革命」
 2 文化革命
 4 社会的流動
 4 大テロル
 5 スターリニズムの政治
 6 外国の脅威?
第3章 大戦と盛期スターリニズム
 1 戦時経済
 2 文化的動員
 3 戦時の社会
 4 戦時の政治
 5 盛期スターリン経済
 6 戦後の社会
 7 戦後の文化
 8 政治的相貌
 9 国際的スターリニズム
第4章 スターリニズムの特質
 1 起源の問題
終章 スターリニズムの遺産
 1 公的な場でのスターリニズム
 2 スターリニズムの構造上の帰結)
訳者解説
参考文献・日本語文献案内
関連年表
索引

グレイム・ギル/著
内田健二/訳
岩波書店
https://www.iwanami.co.jp/book/b257739.html

 

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