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2019年8月11日 (日)

中井英夫戦中日記 彼方より

190713_011  190713_012
鶴見さん「序文」に曰く
 学徒として召集された中井英夫は三宅坂の参謀本部で戦争をのろう日記を書き続けた。その持続は、軍国日本にとって稀有のものである。
 今また軍国にむかっている日本の内部に住んで、すでに故人となった中居の日記は、有効と無効をこえて、私の心にこだまをつくる。

学徒出陣によって参謀本部にあったのは、中井英夫が22歳のときであって、この日記を書いた中井英夫は「虚無への供物」を書いた中井英夫ではない。
中井英夫に日記を書かせ歌を詠ませた母、その死をめぐる日記の記述では、当時ジャワにいた父中井猛之進(そのころ海軍軍属としてジャワに赴任した鶴見さんは当地で植物園長であった中井猛之進と会っているし、敗戦に際して中井猛之進がとった行動についても書いている)が家庭では暴君であったことを示していて(他の著書でも多々出てくるが)、「その夫に精神的な不具にされ、のみならず肉体的にも不具にされ」(P.55)た母に対する思いの強さ深さは、信じられないほどだ。
日記とは雖も、ここまで書くのか、しかも、市ヶ谷の帝国陸軍参謀本部の部屋で。
逆に、ここまでの日記を「完全版」として公開するのかとも思ってしまう。
「日本は愛しよう。併し今その日本を動かす資本主義と軍国主義を私は愛さない」(P18)と書き、「精神革命起案草案」を認める(P49)中井英夫と、連綿と母のことを書き綴る中井英夫との接点は何処にあるのだろうか。

P149の記述。
日比谷でオペレッテをみた。音楽映画ではなく、凡そ下卑た、うはついた代物、で大体フォルストの顔も演技も嫌ひなので全巻不愉快だけれども、ズッペにしろヤウネルにしろ、喜劇役者としてしか登場しないのだからそもそも話にならない。
注によれば、中井英夫が見たのはヴィリ・フォルスト「維納物語」、それにしても酷評。

中井英夫/著
河出書房新社
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309017150/

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