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2019年5月16日 (木)

ベルツの日記(上)

181004_001
エルウィン・フォン・ベルツ(Erwin von Bälz、1849年1月13日~1913年8月31日)、本書は、1876年の来日以後1904年までの30年弱の日記である。
帯の惹句に「明治150年に読みたい岩波文庫」とあるが、日本礼賛的明治150年ではなく、歴史として「お雇い外国人」をどう評価するか、「お雇い外国人」が見て経験した日本をどう評価するかが、私たちの課題である。
幾つかの興味深い記述をメモしておく。
1876/10/25:一部の人たちは、この国で見出すいっさいがっさいを際限なくこきおろし、これを嘲笑の種にしたり、多少ともあれ露骨に軽侮の色をすら見せたりなどしています。(P.46):こうした一部の人たちの「日記」があれば、読んでみたいものだ。
1876/11/1:九州島の熊本で、陸軍の弊社が百名あまりの武装した士族の襲撃をうけた(P.48):神風連の乱
1877/2/23:九州島の南部にある鹿児島県は、サツマ人の本拠であるが、政府に反旗を翻して大騒ぎである(P.65):言うまでもなく西南戦争
1880/11/3:天皇誕生日。この国の人民がその君主に寄せる関心の程度が低い有様をみることは情けない。警察の力で、家々に国旗を立てさせねばならないのだ。自発的にやるものは、ごく少数だろう(P114):ベルツが5月1日の改元の様子を見たら驚くことだろう。
一方で、ベルツの帝国への心情も推察できる。
1880/11/8:鎌倉の大仏の「ある若い僧」による「手や、ひざの上にのって写真をとらせる慣例」(P.115):「高精密画像で甦る150年前の幕末・明治初期日本」にその類の写真がある。
http://m-kusunoki.cocolog-nifty.com/blog/2019/03/post-8918.html
廃仏毀釈の影響も、あるのだろう。
「日本の家庭生活に就いて」からの引用文から「他国民の生活や風習の中でいろいろな点をおかしいという人たちは、もともと自身が理解していない事柄を笑うのであるから、結局は自身が物笑いになるにすぎない」(P.128):嫌韓嫌中な人たちに聞かせたい言葉だ。
1889/2/16:森文部大臣の伊勢神宮における行為(P.136):森有礼
1989/4/20:宮ノ下や真鶴に行っている(P.143)が、草津や伊香保など温泉を利用した温泉治療を勧めたことが随所に出てくる。
宮ノ下では富士屋ホテルに泊まっていた(P.168)。
1889/4/26:河鍋暁斎を診察したようだ(P.143)
1889/10/18:暗殺事件が起こったのである、それが大隈外務大臣に!(P.149):大隈重信暗殺未遂事件。
1891/5/11:大津でロシア皇太子に凶行(P.155):大津事件
1894/7/25:東京では号外が出た―鎮台の一部に出動命令が下り、予後備兵粗油週の準備が進められていると。戦争らしい(P.167):日清戦争。
1900/6/17:英国のシーモーア提督が一千四百名の各国連合軍を率いて、天津から北京に進軍した(P.212):北清事変。
1900/8/1:イタリア王が暗殺された(P.220):共和主義者と対立したウンベルト1世が7月29日に暗殺された。
1902/4/2:日本在留25周年を記念する祝典での演説で、「日本では今の科学の「成果」のみをかれらから受取ろうとしたのであります。この最新の成果をかれらから引継ぐだけで満足し、この成果をもたらした精神を学ぼうとはしないのです」(P.239)と、「日本人が自身で産み出し得るようになるためには、科学の精神をわが物とせねばならない」(P.238)ことを強調している。
いまの高等教育のありようも、「科学の精神をわが物」とすることを忘れてやしないか。
1902/5/19:今や日英同盟が馬脚をあらわしてきた。支払いだ(P.260):いまの日米同盟も同じこと。
1902/12/18:これらの未開の民族こそ、自分のような探求者にとって、民族史的の関係を究明するためには理想の根拠(P.268):時代である。
そういえば「街場の平成論」で「ゲノム解析でわかった驚くべきことは、「人種」などというものは、遺伝子レベルで見た場合、すなわち、生物学的には存在しない、ということだ」(P.196、仲野徹「生命科学の未来は予想できたか」)という文章があった。

トク・ベルツ/編
菅沼竜太郎/訳
岩波書店
https://www.iwanami.co.jp/book/b246450.html
 

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