プラハを歩く

26日からのプラハ行きを目前にして、読んでみる。
20年近くになる本書なので、これが日本であれば、2019年ではもしかしたら無くなっている建築もあるかもしれないと思わざるをえないのだが、プラハでは果たしてどうだろう。
建築そのものの内容だけではなく、その建造物や装飾の歴史やらまつわる伝説や文化など、さらに関連する周辺(物理的周辺だけでなく空間的時間的周辺も含む)の歴史やら伝説やら文化やらもちりばめられていて、飽きない。
プラハが時代とともに市域を広げていった様子や、広がった地域と建築の時代特性などを語って、構成そのものがプラハの歴史である。
たとえば、聖ヴィート大聖堂で「身廊と側廊を分ける二列の列柱を上へ辿ってゆくと、柱はいくつもに分岐し、その先がさらに枝分かれして天井に広がっていく。一本の柱は、まるで森の中の大木だ。ステンド・グラスから射し込む光は木漏れ陽である。すると、大聖堂はまるで森だ」と書いているが、サグラダ・ファミリアもガウディの森を意識しての設計と言われていたっけ。
ただし著者は、大聖堂が必要とした木のことが念頭にあるので、聖ヴィート大聖堂そのもの、さらにプラハの街全体が「ボヘミアの森」と映るのだろう。
そしてカレル橋。
カレル橋は「広場」だそうな。
何故かというに、ローマで広場とは「彫刻で囲まれた空間」(P.102)をいうのだと。
戦災によって破壊されることのなかったプラハ、けれど「春」や「ビロード」の舞台となったプラハ、戦災にあったウィーン、分割統治されたウィーンとは違った歴史を感じることになるのだろう。
はじめに 人間が建築をつくる(ダンスをするビル)
第I章 城―木と石の技術
ボヘミアの森、ヴルダヴァ川、フラチャヌィの丘、イルカの丘、聖イジー教会、聖ヴィート大聖堂、ヴラジスアフ・ホール
第II章 旧市街―石の暮らし
聖イリイ教会、ロマネスクの遺跡群、旧市街市庁舎、カレル大学、聖ベツレヘム礼拝堂、ティーン聖母教会、聖ヤクブ教会
第III章 城下町―スタッコの装飾と芸術
カレル橋、ストラホフ修道院、ベルヴェデーレ離宮、シュヴァルツェンベルク宮殿、マラー・ストラナ、バルトシュテイン宮殿、聖ミクラーシュ教会
第IV章 新市街―都市の空間
新市街、カレル広場、国民劇場、民族墓地、市民会館、ヴァーツラフ広場
第V章 郊外―鉄とレンガとコンクリートのデザイン
工業宮殿、黒い聖母の家、コチュラの自邸、ライヒテル・ハウス、インターナショナル・ホテル、ミュラー・ハウス
むすび 建築が人間をつくる(ヨゼフォフの再開発)
あとがき
主な参考文献
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