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2019年2月19日 (火)

戦禍に生きた演劇人たち 演出家・八田元夫と「桜隊」の悲劇

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むかし、新藤兼人監督の「さくら隊散る」は見たし、三年近く前に「紙屋町さくらホテル」も見た。

築地小劇場から苦楽座の結成、そして日本移動演劇連盟傘下の櫻隊、そして広島での被曝などが、演出家の八田元夫を中心に、関わった多くの演劇人を通して語られる。
ちなみに、1924年6月13日、築地小劇場開設、以後1937年文学座、1944年俳優座、1950年劇団民藝と劇団が結成されている。
そして、新劇が翼賛体制の中で歩まざるをえなかった歴史や、演劇者たちの「戦争責任」の捉え方など、多くのテーマに満ちている。
ただし、多いテーマをどう扱うか、本書では散漫になってしまっているきらいはある。
さらに、年表があるとよかったと思う。

移動演劇さくら隊殉難碑(広島市中区平和大通りの緑地帯内)
移動劇団さくら隊原爆殉難碑(東京都目黒区の天恩山五百羅漢寺)
桜隊原爆忌の会

1925年の治安維持法の説明での「無辜の民にまで及ぼすというごときことのないように十分研究考慮致しました」との小川平吉の国会での法案説明が紹介されている。(P.55~56)
その後の目的遂行罪が加えられたり予防拘禁が行われたりの治安維持法の拡大と弾圧の強化は、改めてここに書くまでもないだろう。
さらに八田元夫の経験や桜隊の話は、いままさに着々と進められつつある方向、盗聴法や共謀罪、戦争法などといったこの国の動きへの警告である。
本書序章最後の文章(P.13)を引用しておく。
彼らが生きた時代に向きあう時、私たちは改めて反芻することになるだろう。あの時と同じ空気が今、この国に漂ってはいやしないか。頭上を覆い始めたどす黒く重い雲から、再びどしゃぶりの雨が降り出しやしないか。そしてその時、はたして私たちは、足を踏ん張って立ちつづけていくことができるだろうかと。

2018年の「桜隊原爆殉難者追悼会」は休止となったことが報道されていたが、「2018年『桜隊原爆忌の会』からの重要なお知らせ」が出ている。

序章 ある演出家の遺品
第一章 青春の築地小劇場
第二章 弾圧が始まった
第三章 イデオロギーの嵐
第四章 拷問、放浪、亡命
第五章 新劇壊滅
第六章 「苦楽座」結成
第七章 彰子と禾門
第八章 眠れる獅子
第九章 戦禍の東京で
第十章 広島
第十一章 終わらない戦争
第十二章 骨肉に食い込む広島
終章 そして手紙が遺された
あとがき
主要参考文献

堀川惠子/著
講談社

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