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2019年2月17日 (日)

精読 アレント『全体主義の起源』

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「全体主義の起源」全3巻を読んだあとで、その解説である「悪と全体主義―ハンナ・アーレントから考える」を読んだ。
さらに、本書を読む。
アレントの「全体主義の起源」の構成に沿って、アレントが何を言おうとしていたのかを解いていく。
これで「全体主義の起源」が理解できたかというと、それはこれからの話で、おそらく本書を脇に置きながら、もう一度読まなければならないだろう。
それにしても、ヒトラーのドイツとスターリンのロシアで、「全体主義」は終焉したのか。
なるほど、アレントの定義した「全体主義」だけが「全体主義」だとすればそうであろうが、中国の周辺地域への支配のしかたや北朝鮮の国内統治のあり方について、アーレントの「全体主義」概念からはどう見ることができるだろうか。

本書は、原著の英語版をベースとしているので、現在日本で刊行されている「全体主義の起源」(英語版の後に刊行された独語版)とは差異があるので、原著各版の比較をしておく。
独語版(みすず書房) 英語版(本書)
反ユダヤ主義
第一章 反ユダヤ主義と常識 第一章 常識からの逸脱としての反ユダヤ主義
第二章 ユダヤ人と国民国家 第二章 ユダヤ人、国民国家と反ユダヤ主義の誕生
 1 解放の曖昧さとユダヤ人の御用銀行家  1 解放の両義性とユダヤ人御用銀行家
 2 プロイセンの反ユダヤ主義からドイツにおける最初の反ユダヤ主義政党まで  2 初期の反ユダヤ主義
 ー  3 最初の反ユダヤ主義政党
 3 左翼の反ユダヤ主義  4 左翼の反ユダヤ主義
 4 黄金の安定期  5 安定の黄金時代
第三章 ユダヤ人と社会 第三章 ユダヤ人と社会
 1 例外ユダヤ人  1 パーリアと成り上がり者の間
 2 ベンジャミン・ディズレイリの政治的生涯  2 有能な魔術師
 3 フォブール・サン=ジェルマン  3 悪徳と犯罪の間
第四章 ドレフュス事件 第四章 ドレフュス事件
 ー  1 事件の事実経過
 1 ユダヤ人と第三共和国  2 第三共和国とフランス・ユダヤ人
 2 軍・聖職者 対 共和国  3 共和国に対抗する軍隊と聖職者
 3 民衆とモッブ  4 人民とモッブ
 ー  5 ユダヤ人とドレフェス支持派
 4 大いなる和解  6 恩赦とその意味するもの
帝国主義
第五章 ブルジョワジーの政治的解放 第五章 ブルジョワジーの政治的解放
 1 膨脹と国民国家  1 拡張と国民国家
 2 ブルジョワジーの政治的世界観  2 権力とブルジョアジー
 3 資本とモッブの同盟  3 モッブと資本の同盟
第六章 帝国主義時代以前における人種思想の発展 第六章 人種主義成立以前の人種思想
 1 貴族の「人種」 対 市民の「ネイション」  1 市民の「国民」に対抗する貴族の「人種」
 2 国民解放の代替物としての種族的(フェルキッシュ)一体感  2 国民解放の代替物としての人種的統一
 3 ゴビノー  3 歴史の新たな鍵
 4 「イギリス人の権利」と人権との抗争  4 「イギリス人の権利」対人間の権利
第七章 人種と官僚制 第七章 人種と官僚制
 1 暗黒大陸の幻影世界  1 暗黒大陸と魑魅魍魎の世界
 2 黄金と血  2 金と人種
 3 帝国主義的伝説と帝国主義的性格  3 帝国主義的人物像
第八章 大陸帝国主義と汎民族運動 第八章 大陸帝国主義:汎民族運動
 1 種族的(フェルキッシュ)ナショナリズム  1 種族的ナショナリズム
 2 官僚制――専制の遺産  2 無法性の継承
 3 政党と運動  3 政党と運動
第九章 国民国家の没落と人権の終焉 第九章 国民国家の衰退と人権の終焉
 1 少数民族と無国籍の人々  1 「少数民族」と無国籍の人々
 2 人権のアポリア  2 人種の困難性
全体主義
第十章 階級社会の崩壊 第十章 階級なき社会
 1 大衆  1 大衆
 2 モッブとエリートの一時的同盟  2 モッブとエリートの一時的同盟
第十一章 全体主義運動 第十一章 全体主義運動
 1 全体主義のプロパガンダ  1 全体主義のプロパガンダ
 2 全体主義組織  2 全体主義組織
第十二章 全体的支配 第十二章 権力を握った全体主義
 1 国家機構  1 いわゆる国家機構
 2 秘密警察の役割  2 秘密警察
 3 強制収容所  3 全体的支配
 ー 第十三章 イデオロギーとテロル:新しい政府携帯
第十三章 結語(英語版第二版)
 ー  ー
第十三章 イデオロギーとテロル:新しい政府携帯(英語版第二版)
 ー  ー
第十四章 エピローグ:ハンガリー革命についての省察(英語版第二版)
 ー  ー
 1 スターリン死後のロシア
 ー  ー
 2 ハンガリー革命
 ー  ー
 3 衛星国システム

「第一章 『全体主義の起源』以前のアレント」のなかで、ユダヤ人にとってパレスチナが「母国」「故郷」となりうるとアレントが考えていたことが紹介されるとともに、実際にユダヤ人のパレスチナ入植が行われ第一次中東戦争へと至ったことが書かれているが、戦時中に「救出されたユダヤ人をパレスチナに移住させるのは、パレスチナに対するユダヤ人の侵略のようなものだ」という主張を日本のインド向け放送が行ったことが、「戦争とラジオ BBC時代」(晶文社刊、ジョージ・オーウェル/著、W・J・ウエスト/編、甲斐絃・三澤佳子・奥山康治/訳)のP.294に記載されている。
そしてこの放送内容は、「戦争とラジオ BBC時代」P.548以降に、当該放送内容「ニュース解説「ユダヤ人を増やしてアラブ人をパレスチナから追い出す政策」―パレスチナはすでに人口過密 1942年12月28日」として収録されている。

見つけた誤植、P.189「一九三六年に交付された憲法」は、正しくは「一九三六年に公布された憲法」だろう。

序章 アレントと『全体主義の起源』
第一章 『全体主義の起源』以前のアレント
第二章 ユダヤ人と国民国家――『全体主義の起源』第一部「反ユダヤ主義」
 1 反ユダヤ主義と全体主義
 2 国民国家体制の展開とユダヤ人
 3 反ユダヤ主義の形成
 4 ユダヤ人と社会
 5 ドレフュス事件
第三章 帝国主義と国民国家体制の崩壊――『全体主義の起源』第二部「帝国主義」
 1 国民国家解体の原動力として帝国主義
 2 人種思想の起源
 3 「アフリカ争奪戦」と人種主義の形成
 4 大陸帝国主義と種族的ナショナリズム
 5 国民国家体制の崩壊と「人間の権利」
第四章 全体主義の成立――『全体主義の起源』第三部「全体主義」
 1 階級社会の解体
 2 運動としての全体主義
 3 体制としての全体主義
第五章 イデオロギーとテロル
 1 初版結語
 2 「イデオロギーとテロル」
第六章 戦後世界と全体主義
 1 スターリン死後のロシア
 2 全体主義的帝国主義の問題
結 『全体主義の起源』以降のアレント

牧野雅彦/著
講談社

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