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2016年1月 2日 (土)

市民的抵抗―非暴力行動の歴史・理論・展望

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訳者あとがきで「非暴力による市民的抵抗の歴史が概括的に示されていることと、軍事的防衛に取って代わる市民の非暴力防衛の理論と実践についての考察がなされている」としている。
その意味で、目次を詳細にしてみた。
戦後70年を期して「安全保障」という概念が日本のありようを大きく変えてしまったが、もう一度、市民的抵抗・市民的防衛について考えてみるうえで、本書の役割は大きいだろう。
ただし、訳文は必ずしも読みやすいとは思えないのが残念である。

本書のなかで、1967年に発行された「市民的防衛の戦略」に関する記述(P.147)に、日本国憲法にとって参考にできるであろう記述があった。
その本が推奨している主要概念の一つは脱武装(transarmament)で、この造語は軍備の撤廃(dis armament)の代替語として提起されたもので、「軍備の撤廃は軍備を除去することを意味し、おそらく人びとに防衛手段がないという印象を与えるであろうが、脱武装は別種の、非軍事手段に寄る防衛を暗に意味していた。その言葉は斬進的な意味合いも持っていた。個々人が戦争に参加するとかしないとか、個々人がどんな決定をするにせよ、国家レベルでの防衛上の軍事手段は、代替できる非軍事的手段が機能する度合いに応じた限りで排除されることになるであろう。」ということである。
安保法案に反対する運動について、丸腰では国を守れないといった短絡的な批判が多くなされたが、日本国憲法の戦争放棄・軍備放棄規定は「自分たちを、自分たちの国を守る」ことそのものを否定しているものではないことの確認と、「自分たちを、自分たちの国を守る」手段としての非軍事的防衛についての提起をしてこなかったこと、提起できなかったことへの自己批判が必要だろう。
それは本書の「第六章 市民的抵抗の戦略」での考察とも関連し、軍事的な「抑止力」だけが抑止ではないこと、また、「市民的抵抗が成功しないと思われる状況が生じるであろう」が、「同じことは、しばしば軍事的防衛についても当てはまる」(P.185)だろうという指摘も含めて、『外交・防衛問題については中央政府の専権事項である』という「常識」を疑ってみること、少なくとも、だから政府に任せておくのではなく、だからこそ市民が考えることが必要となる。
市民的抵抗の戦略の目標として、「大きな目的は国を守るのと同じだけ、国への攻撃を止めさせたり、思いとどまらせたりする」、「潜在的な攻撃者たちにあらかじめ彼らが遭遇するであろう問題に気づかせる」(P.180)ために何をしなければならないかを、自ら考えること、そしてそのための準備や計画を自ら検討することになるのだろう。
もうひとつは、防衛の視点のとき、相手を「敵」という見方とすることでいいのか、もう少し客観的な視点で「侵略者」「攻撃者」といった規定をするのがいいのか、ということも、考えなければならないことだろうと思う。

著者については、こちらを参照。
内容は、本書の「市民的抵抗―著者マイケル・ランドルの場合」とほぼ同じである。

謝辞
市民的抵抗―著者マイケル・ランドルの場合
第一章 市民的抵抗と“現実政治”
第二章 受動的抵抗の進展
     不服従と反抗―ヨーロッパの遺産
     集団的非協力―受動的抵抗の誕生
      十八世紀以前の貢献
      急進的・初期労働者階級の運動
      民族主義と立憲主義の運動
      空想主義的・革命的計画
第三章 サティヤーグラハから民衆の力へ
     解放闘争
      インド
      南アフリカ 一九四六―九二年
     公民権
     国境を越えた非暴力行動
     独裁制に対する市民的抵抗―ラテンアメリカ、イラン、フィリピン
     軍事クーデターに対する市民的抵抗―一九九一年八月の反ゴルバチョフ・クーデター
     侵略に対する市民的抵抗―一九六八年のチェコスロヴァキア
第四章 非暴力行動の力学
     はじめに
     道徳的で政治的な柔術
     市民的抵抗および変革の社会的メカニズム
     紛争を行う際の積極的および消極的な様式
     分極化
     非暴力戦略の諸要素
     抑圧の問題
第五章 代替防衛とは何か―概念の誕生
     起源
     概念の発展
第六章 市民的抵抗の戦略
     戦略の研究
     問題と限界
     抑止と抑制
     混合戦略となるのか?
     組織
第七章 民衆のエンパワーメントと民主的諸価値
第八章 一九九〇年代の市民的抵抗
     市民的抵抗による防衛
     草の根の市民的抵抗
付録
訳者あとがき

マイケル・ランドル(Michael Randle)/著
石谷行/訳
田口江司/訳
寺島俊穂/訳
新教出版社

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