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2015年10月26日 (月)

集団的自衛権の何が問題か―解釈改憲批判

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平成26年7月1日「国の存立を全うし,国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」閣議決定
我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律
国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律
平成27年 5月15日衆議院受理
平成27年 5月19日衆議院我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会受理
平成27年 7月15日衆議院我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会可決
平成27年 7月16日衆議院可決
平成27年 7月16日参議院受理
平成27年 7月27日参議院我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会受理
平成27年 9月17日参議院我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会可決
平成27年 9月19日参議院可決
平成27年 9月30日公布(法律第76号、法律第77号)

安保法制が成立したので、あらためて「集団的自衛権」について整理するため、昨年の閣議決定を受けて刊行された本書を読んだ。
奥平氏の「はじめに」で、「日本本土防衛に限って、急迫不正の敵勢力を押え込むのに必要最小限の実力を行使することのみ許容されるという個別的自衛権論には、まだ平和主義と言う冠を留保しておけると思う」とされていることは、「そうであっても、」と続いていくものと理解しておこう。
論者のすべてが必ずしも同じスタンスでいるわけではないし、お互いに整理されているわけではない。
むろん、一定の結論があらかじめ立てられているわけでもない。
むしろ、それぞれの論者の立場でそれぞれの論理によって、安保法制懇報告書や閣議決定のもつ危険性や違憲性について指摘していることが、「集団的自衛権」に対する論考を厚くしている。
その意味では、それぞれの論考が読む者にとってどのように位置づけられるのかは、読む者が整理しなければならないことだろう。
安保法制をめぐる国会の議論は、本書刊行以降のことである。
国会論議において、憲法に照らして問うことを「神学論争」といった揶揄的な論評がなされていたが、このような憲法に照らして問うことを捨象する論評は、ある意味では政権によるクーデターに等しい安保法制成立までの動きを常態としてしまうことにもなり、「特定秘密保護法」「武器輸出」「文民統制弱体化」「安保法制」と揃った日本の民主主義にとって極めて危険な考え方であることが、あらためて確認できる。

なお、高橋和之氏は「立憲主義は政府による憲法解釈変更を禁止する」の、9条を原理とするかルールとするかの考察になかで、長谷部恭男氏の「原理と解すべき」考え方のプロセスを批判しているが、長谷部恭男氏による後の安保法制違憲発言との関係では、その真意をもっと探りたいところではある。
もっとも、高橋和之氏と長谷部恭男氏との間には、これまでにも論争があったようだが。

はじめに――平和主義を勝ち抜こう 奥平康弘(東京大学名誉教授 憲法学)
I 安倍政権は何をやりたいのか
 安倍政治の戦後史的位相 山口二郎(法政大学教授 政治学)
 危険な政治信条の代償として「国民の命と暮らし」が奪われる 半田滋(東京新聞論説兼編集委員)
 対談 安倍総理は何を欲しているのか 御厨貴(東京大学名誉教授 近代日本政治史)・長谷部恭男(早稲田大学教授 憲法学)
 インタビュー 現実を無視した危険な火遊び 柳澤協二(元内閣官房副長官補 国際地政学研究所理事長)
II 立憲主義の破壊
 私たちに何が求められているのか 青井未帆(学習院大学教授 憲法学)
 禁じ手ではなく正攻法を,情より理を 南野森(九州大学準教授 憲法学)
 集団的自衛権論の展開と安保法制懇報告 浦田一郎(明治大学教授 憲法学)
 集団的自衛権行使が憲法上認められない理由――「背広を着た関東軍」安保法制懇の思考 水島朝穂(早稲田大学教授 憲法学)
 砂川事件最高裁判決、田中補足意見、「必要最小限度」の行使 高見勝利(上智大学教授 憲法学)
 立憲主義は政府による憲法解釈変更を禁止する 高橋和之(東京大学名誉教授 憲法学)
 インタビュー 「限定」であっても平和主義を大きく変容させる 阪田雅裕(元内閣法制局長官 弁護士)
III 国際環境の変化と集団的自衛権
 グローバルな寡頭支配の拡散に日本の立憲デモクラシーは抗えるか 中野晃一(上智大学教授 比較政治学)
 米国外交からみた集団的自衛権 西崎文子(東京大学教授 アメリカ外交史)
 沖縄からの異議申し立て 前泊博盛(沖縄国際大学教授 沖縄経済論)
 集団的自衛権を支える安全保障概念を問い直す 岡野八代(同志社大学教授 フェニミズム政治理論)
V 私はこう考える
 インタビュー 最悪の事態を想定することの落とし穴 丹羽宇一郎(前駐中国特命全権大使 前伊藤忠商事会長)
 インタビュー 日本は「ワイマールの落日」を繰り返すな 村上誠一郎(衆議院議員(自由民主党) 元侠客担当相
 インタビュー 元防衛大臣として問う安倍首相の政治観 北澤俊美(元防衛相)
あとがき 山口二郎
資料

奥平康弘、山口二郎/編
岩波書店

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