独裁者の学校
原著は1956年の刊行、本書は1959年刊行の初版。
長らく探していたのだが、ようやくずいぶん廉価で見つけることができた。
半世紀以上前の時代を感じさせる本であるが、みすず書房宛の愛読者カード(宛先は文京区春木町一ノ二二、その後の住居表示で現在の所在地になったのだろう)や註文伝票もはさまっていたのが驚き。
愛読者カードをみすず書房に送ったら、どんなリアクションがあるだろうか。
原題は「Die Schule der Diktatoren」。
登場人物の一覧をみると、番号のついた者は「第四の男」からはじまるのだが、第一の男から第三の男まではどうしたのだろうと思った。
この理由は本文のなかですぐにわかるのだが、黒幕との関係では、第一の男から始めないほうが効果的なのだろう。
テーマはチャップリンの「独裁者(The Great Dictator)」と通ずるものがあるが、ケストナーがこの映画を見ていたかどうかはわからない。
それにしても、「わたしは何をしたいと思ったのでしょうか、これから何をしたいというのでしょうか。大多数の人たちのためにわずかな幸福、すこしばかりの落着き、一片の自由、これなのです。それが大それたものででもあるのしょうか」と叫び、殺されてしまう第七の男に、私たちは何を見ればいいのだろうか。
第一場と第二場は、「大きなケストナーの本」に収録されているが、「大きなケストナーの本」も絶版。
E.ケストナー/著
吉田正己/訳
みすず書房
| 固定リンク
コメント