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2015年8月22日 (土)

戦争が遺したもの―鶴見俊輔に戦後世代が聞く

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鶴見俊輔、2015年7月20日没、享年93歳。
本書は10年前に語られた「戦争が遺したもの」だが、戦後70年のいま聞いたら、どのようなことが付け加えられただろうか。
いや、そうではない、自分じしんで付け加えなければならないのだろう。

鶴見さんと上野さんとはともかく、鶴見さんと小熊さんは初対面、それでいてこれだけの言葉を鶴見さんの口から出させる力はすばらしい。
相当事前研究をしてきたのだろう。
単独インタビューでは、ここまでの言葉を引き出すことは難しかったのかもしれない。
それにしても、上野さんと小熊さんとの間のやりとりなど、一対一ではないインタビュー(これはいわゆるインタビューではなさそう)の醍醐味にあふれている。

自身が海軍軍属としてジャワにいたときに「従軍慰安婦」とのかかわりがあったこと、そして「女性のためのアジア平和国民基金」とのかかわりでは、なぜかかわりをもったのか、その評価については、上野さんは厳しく鶴見さんを問い詰め、鶴見さんはその問いに答え続け、そのやりとりが小熊さんが「そのあたりでちょっと……」と止めるまで続いている。
文字でこれだけのやりとりが表されているということは、インタビューの現場では相当な緊張感が満ち満ちていたのだろうなと思う。
後半では、70年代の「思想の科学」や「ベ平連」など、自分にとって同時代以上のかかわりが重なってくるので、当時のことがあれこれ思い出される。

「正義というのは迷惑だ」(P.28)という言葉は、記憶にとどめておこう。
そのほかにも、記憶しておきたい言葉。
“You can fool some of the people some of the time, you can fool all the people some of the time, but you cannot fool all the people all the time.” By Abraham Lincoln(P.99)
羽仁さんは、八月十五日には、友人たちが自分を牢獄から開放してくれると思って、ずっと待っていたというんだ。だけど誰も来なかったって。(P.131)
黙っている人間は、ただ黙っているだけじゃなくて、沈黙のなかの記憶というのはあるんだ(P.284)
ほかにも響いてくる言葉はあちことにあるのだが、あくまでも聞き書きであることを考えると、ここに抜き出すのは、何となくはばかられるので、これだけにしておこう。

一日目
 原点としての生立ち
 ジャワでの捕虜殺害
 「従軍慰安婦」の問題
 雑談1 一日目夜
二日目
 八月十五日の経験
 占領改革と憲法
 『思想の科学』の創刊
 丸山眞男と竹内好
 五〇年代の葛藤
 戦争責任と「転向」研究
 雑談2 二日目夜
三日目
 六〇年安保
 藤田省三の査問と女性史の評価
 吉本隆明という人
 アジアの問題と鶴見良行
 全共闘・三島由起夫・連合赤軍
 ベ平連と脱走兵援助
 雑談3 三日目

鶴見俊輔・上野千鶴子・小熊英二/著
新曜社
http://www.shin-yo-sha.co.jp/mokuroku/books/4-7885-0887-7.htm

 

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