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2015年6月 2日 (火)

平和のための革命

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原著名「Peace Revolution」。
そのままでは「平和革命」となるだろうが、邦題を「平和のための革命」としたのは、「平和的移行による革命」(Peaceful Revolution)の意味ととらえられる誤解を避けるためと、訳者の説明がある(P.216~)ことに留意すべきだろう。
本書における革命の定義は、「社会的・政治的革命とは、既成の権威の諸原理および慣行を、あるいは(同じことだが)社会の支配的諸制度を変革するような一連の出来事」(P.6)としている。
そうした革命の定義が平和のために歴史過程においてどのように構想できるのか、これが本書のテーマである。

抵抗権(革命権)に関する規定は、合衆国独立宣言に明記されているが、著者はこの考えに重きを置いている。
The Declaration of Independence of The United States of America
That whenever any Form of Government becomes destructive of these ends, it is the Right of the People to alter or to abolish it, and to institute new Government
またドイツ連邦共和国基本法にも、同様の規定がある。
Grundgesetz für die Bundesrepublik Deutschland
Artikel 20 [Grundlagen staatlicher Ordnung, Widerstandsrecht]
(1) Die Bundesrepublik Deutschland ist ein demokratischer und sozialer Bundesstaat.
(2) Alle Staatsgewalt geht vom Volke aus. Sie wird vom Volke in Wahlen und Abstimmungen und durch besondere Organe der Gesetzgebung, der vollziehenden Gewalt und der Rechtsprechung ausgeübt.
(3) Die Gesetzgebung ist an die verfassungsmäßige Ordnung, die vollziehende Gewalt und die Rechtsprechung sind an Gesetz und Recht gebunden.
(4) Gegen jeden, der es unternimmt, diese Ordnung zu beseitigen, haben alle Deutschen das Recht zum Widerstand, wenn andere Abhilfe nicht möglich ist.

第2章においては、合衆国憲法における議会の権限と大統領の権限との関係を、執筆当時のベトナム戦争をめぐる動きのなかで考察している。
アメリカ合衆国憲法での軍に対する権限などにふれた部分(P.59)で引用されている、議会にあたえられた権限の規定は、次のとおり。
The Constitution of the United States of America
Article. I.
Section. 8.
Clause 11: To declare War, grant Letters of Marque and Reprisal, and make Rules concerning Captures on Land and Water;
Clause 12: To raise and support Armies, but no Appropriation of Money to that Use shall be for a longer Term than two Years;
Clause 13: To provide and maintain a Navy;
Clause 14: To make Rules for the Government and Regulation of the land and naval Forces;
Clause 15: To provide for calling forth the Militia to execute the Laws of the Union, suppress Insurrections and repel Invasions;
Clause 16: To provide for organizing, arming, and disciplining, the Militia, and for governing such Part of them as may be employed in the Service of the United States, reserving to the States respectively, the Appointment of the Officers, and the Authority of training the Militia according to the discipline prescribed by Congress;
一方、大統領に与えられている権限は、次のとおり。
Article. II.
Section.2.
Clause 1: The President shall be Commander in Chief of the Army and Navy of the United States, and of the Militia of the several States, when called into the actual Service of the United States; he may require
the Opinion, in writing, of the principal Officer in each of the executive Departments, upon any Subject relating to the Duties of their respective Offices, and he shall have Power to grant Reprieves and Pardons for Offences against the United States, except in Cases of Impeachment.

合衆国憲法は戦争があることを前提としている憲法であるから、憲法上に戦争や軍に関する議会の権限と大統領の権限が明記されている。
ただし、ベトナム戦争をはじめとして、現実的歴史的には、その規定が遵守されているとは言い難いのではあるが。
日本は憲法上の規定で戦争は放棄されているので、憲法においては戦争に関する行政府や立法府の権限の規定は存在しない。
その結果、逆説的に内閣総理大臣に権限が集中される結果となっている。
日本国憲法
第七十二条 内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。
自衛隊法
第七条 内閣総理大臣は、内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有する。

このため、国会に対しては事前にしろ事後にしろ、法律のなかで報告義務が規定されることになるのだが、どうしても立法府に従属する形となってしまう。。
合衆国憲法の規定は、現在の日本の動きをふまえたとき、安全保障をめぐる日本国政府の権限と国会の権限、「集団的自衛権にもとづく抑止力」論の不毛さにおいて、大きな参考となるだろう。

2014年7月1日、「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」国家安全保障会議決定 閣議決定
2015年5月26日、「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案」(内閣提出)及び「国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案」が第189国会に置いて審議入りした。

その他、気になる文章。
「ある一連の事件が革命であるか否かは、社会制度にもたらされた変化の性質と程度によってきまるのであって、その変化をもたらす際に行使された暴力の程度によってきまるのではない。」(P.9)
「ある既成の社会秩序が正常に機能させられる場合にも、物理的な力ないし暴力が大きな役割を演じてきたことを想起しなければならない。(略、この)場合に、より多くの暴力が行使されてきたのである。」(P.10)
「無気力状態が蔓延するところでは、政府はたやすく暴政政府となり、死が支配する。」(P.28)

「ジョン・サマヴィル」の名前を聞いても、その人がどのような人だったのかを知っている人は、もはや多くはないのかもしれない。
訳者の芝田進午氏がアリス・ハーズ女史(ベトナム戦争にまい進する米国政府に対する抗議から82歳であった1965年3月16日に焼身自殺を図り10日後の3月26日に死去)と知り合ったのは、ジョン・サマヴィルの紹介によるものであった。
訳者も指摘しているが、本書におけるジョン・サマヴィルの考え方すべてが首肯できるということではない。
読んでいて「そうかな?」と思うところはいくつかあり、典型的なところでは、1968年のチェコスロヴァキアと1956年のハンガリーにふれた部分である。
「ソ連のチェコスロヴァキア侵入が非難されるべき」と言っているのだが、「この判断はハンガリーにおけるソ連の行動にはあてはまらない。」(いずれもP.305)と記している部分は、サマヴィルの考察の限界か、あるいはサマヴィルが考察するために利用することができた資料の限界によるものなのか。
とはいえ、本書は、平和を考え実践していくうえでの古典として、本書はきちんと評価されるべき著作である。

日本語版への序文
序文
第一章 平和のための革命
第二章 新しい政治
第三章 新しい経済
第四章 新しい道徳
第五章 新しい教育
第六章 新しい意味論
第七章 新しい平和の科学
第八章 技術にたいする新しい関係
補論 ウォーターゲートの意味するもの
『平和のための革命』によせて

ジョン・サマヴィル(John Somerville)/著
芝田進午/訳
岩波書店

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