« 2015年5月〜6月 | トップページ | いぬ・犬・イヌ »

2015年5月 3日 (日)

ガイドブック 五日市憲法草案 ~日本国憲法の源流を訪ねる~

150501_006  150501_007
終戦から70年にして、日本がこれまで歩んできた道から大きく踏み外そうとしている。
そして、日本国憲法を「GHQの素人がたった8日間で作り上げた代物」と貶め、変えてしまおうという声が、日増しに大音量となってきつつある。
その年の憲法記念日にあたって、読んでみることにした。

大日本帝国憲法の公布(1889年(明治22年)2月11日)前、私擬憲法は100を超えていたらしい。
五日市憲法草案そのものは、自由民権運動に対する弾圧とともにその後は関係者の蔵の中に眠ってしまったのだが、今から134年前にこうした憲法が考えられたことは、それから60年以上たってGHQから憲法改正の示唆を受け3カ月後に明らかになったものが松本私案等であったという当時の政府の認識と比べたとき、大いに注目すべきことだ。
簡単にではあるが、日本国憲法成立過程にもふれている。
そのとき、民間団体「憲法研究会」の「憲法草案要綱」(五日市憲法は未発見だったため参考にされていないが、植木枝盛の「東洋大日本国国憲按」は参考にされている。本書P.100)がGHQにも提出されていたことは、もっと知られていよいことだろう。
また、成立過程を確認すれば、「押しつけ憲法」論や「GHQの素人がたった8日間で作り上げた代物」論がまやかしであることが理解できる。

五日市憲法草案からいくつか。
国民の要件が属地主義であること、基本的人権の考え方が日本国憲法と比べても遜色のないこと、憲法改正は国民投票規定はないが日本国憲法よりも国会の要件が厳しいことがわかる。
日本国民
四二 左ニ掲クル者ヲ日本国民トス
 一 凡ソ日本国内ニ生ルヽ者
 二 日本国外ニ生ルヽトモ日本国人ヲ父母トスル子女
 三 帰化ノ〔免〕状ヲ得タル外国人
  但シ帰化〔ノ〕外国人カ享有スヘキ其権利ハ法律別ニ之ヲ定ム
※第十条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。
基本的人権
四五 日本国民ハ各自ノ権利自由ヲ達ス可シ他ヨリ妨害ス可ラス且国法ヲ保護ス可シ
※第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
四九 凡ソ日本国ニ在居スル人民ハ内外国人ヲ論セス其身体生命財産名誉ヲ保固ス
※第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
憲法改正
一四九 国ノ憲法ヲ改正スルハ〔特別〕会議ニ於テス可シ
一五〇 両議院ノ議員三分ノ二ノ議決ヲ経テ国帝之ヲ允可スルニ非レバ特別会ヲ召集スルコトヲ得ス〔特〕別〔会〕議員ノ召集及撰挙ノ方法ハ都テ国会ニ同シ
一五一 特別会ヲ召集スルトキハ民撰議院ハ散会スル者トス
一五二 特別会ハ元老院ノ議員及国憲改正ノ為ニ撰挙セラレタル人民ノ代民議員ヨリ成ル
一五三 特別ニ撰挙セラレタル代民議員三分ノ二以上及元老院議員三分二以上ノ議決ヲ経テ国帝之ヲ允可スルニ非レバ憲法ヲ改正スルコトヲ得ス
一五四 其特ニ召集ヲ要スル事務畢ルトキハ特別会自ラ解散スル者トス
一五五 特別会解散スルトキハ前ニ召集セラレタル国会ハ其定期ノ職務ニ復ス可シ
一五六 憲法ニアラザル総テノ法律ハ両議院出席ノ議員過半数ヲ以テ之ヲ決定ス
※第九十六条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。

五日市憲法の章立ては次のとおり(カッコの数字は該当篇章の条文)。
日本帝国憲法
第一篇 国帝
 第一章 帝位相続(1~10)
 第二章 摂政官(11~17)
 第三章 国帝権理(18~41)
第二篇 公法
 第一章 国民権理(42~77)
第三篇 立法権
 第一章 民撰議院(78~96)
 第二章 元老議院(97~107)
 第三章 国会権任(108~139)
 第四章 国会開閉(140~148)
 第五章 国憲改正(149~156)
第四篇 行政権(157~169)
第五篇 司法権(170~204)
※篇や章のタイトルは五日市憲法草案本文の前の書かれているもので、本文に書かれたタイトルと異なっている記述がある。
全文は、ここから。

さて、憲法とは何だろうか。
「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」を「全て国民はこの憲法を尊重しなければならない」に変えてしまいたい人たちにとっては受け入れ難いのだろうが、「時の政府に対する国民の命令が憲法」(小森陽一氏の言。本書P.9)だということをいつも心にとどめておこう。
そして、憲法は神棚に据えて拝めばいいということではもちろんないし、護らなければならないというレベルにとどまるものでもなく、日々のなかで、さまざまな場面でものさしとして使うことで活かしていくものである。

あきる野市デジタルアーカイブ「あきる野市と自由民権運動」

美智子皇后が、平成25年の誕生日に際しての宮内記者会の質問に対する文書回答で、五日市憲法にふれている。

メッセージ(新井勝紘)
はじめに
第1章 五日市憲法草案とは
 1.なぜ今、五日市憲法草案に大きな関心が…
 2.発見の経緯
 3.主な条文と対応する日本国憲法条文
 4.内外の研究者から高い評価
第2章 なぜ五日市憲法草案は作られたのか
 1.自由民権運動を背景に~農民一揆と不平士族の反乱
 2.なぜ五日市であったのか
 3.五日市学芸講談会とは
第3章 五日市憲法草案は誰が書いたのか
 1.起草者千葉卓三郎について
 2.千葉卓三郎の思想と制法論
 3.深澤家とのかかわり
 4.卓三郎亡きあとの深澤権八
 5.その後の深澤家
 6.その後の自由民権運動
 7.困民党の運動に
第4章 五日市憲法草案と日本国憲法
 1.五日市憲法草案の精神はどのように日本国憲法に受け継がれているのか
 2.GHQが原案作成に着手した背景
 3.GHQ原案策定を3つの側面から見ると
おわりに~日本国憲法への世界の目
【史料紹介】五日市憲法草案全文

鈴木富雄/著
日本機関紙出版センター

|

« 2015年5月〜6月 | トップページ | いぬ・犬・イヌ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ガイドブック 五日市憲法草案 ~日本国憲法の源流を訪ねる~:

« 2015年5月〜6月 | トップページ | いぬ・犬・イヌ »