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2014年12月 4日 (木)

丸亀ドイツ兵捕虜収容所物語

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第一次世界大戦におけるドイツ兵捕虜に関する書籍は、もともとは、青島でドイツ帝国軍の一員として日本軍と戦い、青島陥落後は日本に抑留された、K.u.K Kriegsmarine Kaiserin Elisabeth(SMS Kaiser Franz Joseph I class Kleiner Kreuzer)(オーストリア・ハンガリー帝国海軍 カイザリン・エリーザベト/皇帝陛下の艦・カイザー・フランツ・ヨーゼフ1世級防護巡洋艦)乗組員のことを知りたかったから読むようになったのであった。
この艦の乗組員は青野原俘虜収容所に収容されたのだが、そのほか習志野俘虜収容所、坂東俘虜収容所に関する書籍を読んできた。
丸亀俘虜収容所に関する本書が出版されたことで、本書を手にしたのである。
本書では「第9話「他の捕虜と折り合い悪しき者」―特殊捕虜―」で、カイザリン・エリーザベト乗組員について扱われている。
ここで「特殊捕虜」とあるのは、【「他ノ一般俘虜ト人種ヲ異ニシ、或イハ我ガ邦人ヲ妻トスル等ノ関係上、他ノ俘虜ト折リ合ヒ悪シク寧(ムシ)ロ我ガ帝国又ハ他ノ連合国側ニ好意ヲ有スル」(『収容所記事』)ゆえに「特殊(または特種)俘虜」と呼ばれた捕虜】(P.151)である。
こうした特殊俘虜を一般俘虜と同居することでトラブルが頻発していたことから、陸軍省は特殊俘虜を一般俘虜から隔離することにし、青野原収容所の俘虜のうちの13名のイタリア系オーストリア人が1916年10月に丸亀に移されている。
さらに1917年4月には坂東収容所に移送されているが、移送に当たっては抵抗を示したようである。
なお、イタリア系オーストリア人は「宣誓解放者」(その戦争において以後抑留国に敵対行動をとらないことを宣言することによって解放された者)として1917年6月に解放され、イタリアに移送されている。

丸亀ドイツ兵俘虜研究会
チンタオドイツ兵俘虜研究会

まえがきに言う。
もしも近い将来に日本で「集団的自衛権の行使」や「集団的安全保障措置」が容認されて、実施される事態になれば、殺し合いは当然のことながら、さらに自衛隊が交戦相手の兵士を捕虜にしたり、逆に自衛隊員が相手方の捕虜になったりする可能性も十分に想定しておかなければならない。(P.8)
昨今の、「嫌韓」「嫌中」の様相、あるいはかの国々の「反日」の様相を見るにつけ、とてもドイツ兵俘虜に対する処遇と同じような処遇は期待できないのではないか。
もっとも、そのような事態が生じないようにしなければならないのだが。
それは、「反日」の国の人たちにも同様に言えることだが、相手がこうだから我が方もこうだという論理ではなく、相手国がどうであれ、我々の「相手国」及び「捕虜」は異なるという矜持は持ち続けるとしなければならないだろう。

「武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律(平成十六年六月十八日法律第百十七号)」では、第二条で基本原則を次のように定めている。
第1項 国は、武力攻撃事態においてこの法律の規定により拘束され又は抑留された者(以下この条において「捕虜等」という。)の取扱いに当たっては、第三条約その他の国際的な武力紛争において適用される国際人道法に基づき、常に人道的な待遇を確保するとともに、捕虜等の生命、身体、健康及び名誉を尊重し、これらに対する侵害又は危難から常に保護しなければならない。
第2項 この法律(これに基づく命令を含む。)の規定により捕虜等に対して与えられる保護は、人種、国籍、宗教的又は政治的意見その他これに類する基準に基づく不当に差別的なものであってはならない。
第3項 何人も、捕虜等に対し、武力攻撃に対する報復として、いかなる不利益をも与えてはならない。

宣誓解放に関しては第百三十七条などで、「第三条約第二十一条第二項に規定する宣誓又は約束」と定義している。

「第三条約」は、「武力攻撃事態において捕虜の待遇に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約」とされている。(第一条)

これは、「捕虜の待遇に関する1949年8月12日のジュネーヴ条約(第三条約・捕虜条約・Geneva Convention relative to the Treatment of Prisoners of War of August 12, 1949)を指す。
第三条約和文
第三条約和文で省略されている第一条約和文
第三条約英文

まえがき
第1話「大いに友好的に、同情を込めて歓迎します」―捕虜の到着―
第2話「美しい日本における無料の休養期間」―収容所生活―
第3話「彼らは退屈に苦しんでいる」―民間ドイツ人の慰問―
第4話「捕虜達を蹴ったり、殴ったり」―収容所からの密告―
第5話「忘恩は世の常」―メッケル将軍の縁者―
第6話「侮辱的取り扱い」―ランツェレ大尉事件―
第7話「人間社会から隔離されている」―捕虜将校の嘆き―
第8話「そこは異常な過密状態」―米国大使館員の来訪調査―
第9話「他の捕虜と折り合い悪しき者」―特殊捕虜―
第10話「大きな愚行」―捕虜の脱走―
第11話「我が国産業の発達・利益に資す」―捕虜の労働と技術指導―
第12話「参考となる物多し」―製作品展覧会―
第13話「気分は最低」―板東への移転―
第14話「遠処宿縁」―元捕虜の丸亀再訪―
あとがき
参考文献

高橋輝和/著
えにし書房

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