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2014年8月13日 (水)

私は東ドイツに生まれた―壁の向こうの日常生活

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以前、「Die Mauer ist gefallen」というドイツの本を読んだ。
東独で生まれ育ち、10歳のときに壁が崩壊した著者Susanne Fritscheの経験による東独史であり、本書の著者フランク・リースナー(Frank Riesner)より一回りちょっと若い世代である。

「Die Mauer ist gefallen」が刊行されたのはSusanne Fritscheが25歳の頃であることから、このとき、「どこまで読み解けたかという課題があるが、本書の記述が経験に基づくものということでは、どこまで事実が記述されているか、その事実は経験なのか後に得た知識なのか、加えて、著者が生まれ育った東独に対してどのような思いを持っていたか、10歳のときからこの本を書くまえの間に蓄積したさまざまな知識、得た情報によっては、内容に一定のバイアスがかかっているであろうことには注意しておく必要があるかもしれない。」と書いた。

「ドイツ社会主義統一党(SED)やシュタージに加わることもなく、いわゆる「自由」を持たずとも東ドイツで幸せに生活していた人間がいた」ひとりが、著者であると自ら書いている本書ではどうであろうか。
壁の崩壊が24歳のとき、本書執筆が46歳頃のことである。
著者は長年日本で暮らしているのだが、当然、壁崩壊から統一後のドイツの情報は、多々得ているだろう。
そのうえで著者は、「東ドイツが気に入ってい」て、「生まれてから二四年間をそこで過ごし、幸せに暮らしていのだ。無償で質の高い職業教育を受けさせてもらった。家族の中には共産主義者なんてひとりもいなかったし、西側のテレビ番組だって視聴していた。クリスマスには西側の親戚から小包をもらい、週末はトラビに乗っていた。」と書いている。
著者はちょうど、「Good Bye, Lenin!」のアレックスと同世代だろう。
アレックスは、東ドイツが消滅するただ中にあって、母のためにあり得るべきドイツ民主共和国をつくりあげていくのだが、本書では現実のドイツ民主共和国がどのような国だったかを、著者の経験に基づいて幅広い分野にわたってまとめている。
それは、単なる「Ostalgie」ではなく、そして「シュタージ」と「バナナ不足」だけではない、ドイツ民主共和国を描き出している。
そして、「壁の崩壊から早二三年が経とうとしているが、「転換期」は、まだ終わっていない。」の文章が心に残る。

「略語・用語集」は、東独関係書籍を読むときに、大いに役立ちそうだ。
ただ、本文ページを記載しておいてもらえればよかったのにと思う。

※裏表紙の車は、ヴァルトブルク(Wartburg))311だ、人が一生懸命押しているけど。

はじめに
関連地図
第一章 東ドイツとはどんな国だったのか?
 1 私たちはどんな国で生活していたのか?
 2 東ドイツの有名人
 3 シュタージ(国家公安局)
 4 ナチス時代からの脱却
 5 ベルリンの壁
第二章 東ドイツの国内政策
 1 社会保障制度
 2 人口政策
 3 女性のための政策
 4 ユーゲントヴァイエ(成人式)/大衆組織
 5 雇用政策
第三章 東ドイツと世界
 1 対外的アピール
 2 東ドイツの経済
 3 日本との関係
 4 西ドイツと東ドイツ
第四章 東ドイツ的日常
 1 ファッション
 2 カーライフ
 3 セックスライフ
 4 治安
 5 国家人民軍(NVA)
第五章 東西再統一、その後
 1 変わりゆく東ドイツ
 2 東ドイツの忘れもの
おわりに
略語・用語集
年表
図版出典一覧

フランク・リースナー(Frank Riesner)/著
清野智昭/監修
生田幸子/訳
東洋書店

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