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2014年8月 5日 (火)

青きドナウの乱痴気―ウィーン1848年

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なんという刺激的なタイトルであることよ。
リーニエとグラシと市壁に囲まれた、旧きウィーン。
いま、ウィーンの市壁とグラシはリンクにとってかわられ、一部に市壁は遺構として残っているものの、1858年以前の姿を想像することはできない。
そしてリーニエは、いまはギュルテルに名残をとどめるのみ。

1848年のフランス2月革命は、ヨーロッパ各地に飛び火していく。
3月、ウィーンではメッテルニヒがイギリスに亡命を余儀なくされる。
皇帝フェルディナント1世は憲法制定議会の開催を約束するが、その約束は守られず欽定憲法が発布される。
怒ったウィーン市民は王宮を襲い、おそれをなした皇帝はウィーンからインスブルックに逃げてしまう。
その後、労働者、プロレタリアが加わり、帝国を構成する諸民族の利害の違いも加わって革命は次第に混乱し、10月に皇帝の軍隊による鎮圧までの8か月が、本書が描く時期である。

1848年の革命によってオーストリア帝国皇帝フェルディナント1世は退位し、甥で弱冠18歳の若さのフランツ・ヨーゼフ1世が即位するのだが、本書の口調から思い浮かぶのは「Sissi」三部作でフランツ・ヨーゼフ1世を演じたカールハインツ・ベームだ。
この映画で描かれる帝室の滑稽さは随所にあるのだが、二作目だったかに登場する警察長官(?)が、革命後の治安のトップかいなと、大笑いした覚えがある。

閑話休題。

1848年の革命には、市壁の内側の人々、グラシの外側の人々、そしてリーニエの外側の人々が、それぞれの立場でかかわっていて、本書はその人々の動きをドキュメンタリーのように描き出している。
良知力氏のウィーン本は、「向う岸からの世界史」「1848年の社会史―ウィーンをめぐって」「女が銃をとるまで 若きマルクスとその時代」などと読んできたが、社会史・革命史的内容についてはさて置き、この時代のウィーンの街や人々の様子を生き生きと描いているのは、本書かもしれない。
他の書籍がさまざまな文献を集めて構成されているのに対し、本書が書下ろしであることが、集大成としての内容の濃さに現れているのだろう。

「あとがき」の日付は1985年10月6日、その14日後、良知力氏は向こう岸に行ってしまわれた。

1 セトルニツキは女を殺したか
2 コーヒー・ハウスとウィーン気質
3 楽師・走り屋・行商人
4 それはマリアヒルフから始まった―三月革命
5 われらが皇帝は遁走した―国民軍
6 職人たちの春
7 因業おやじハウスマイスターの受難
8 真夜中の音楽会―シャリバリ
9 プラーターの夏に
10 「自由な娘」たち
11 リンデンの葉がおちて―十月革命

良知力/訳
平凡社ライブラリー

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