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2014年5月29日 (木)

軍隊のない国家―27の国々と人びと

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初版第1刷がでたのが2008年4月であるから、第一次安倍内閣が倒れて以後である。
2008年以後の状況は、序章で書かれている『第九条を現代平和主義の源流とするために、あらゆる機会に第九条を活用し、その精神を世界に発信し、ぼろ雑巾になるくらい「使う」必要がある』ことがますます明らかになってきていると言えるだろう。
「軍備」「国家」の定義は何かという課題はあるし、自国に軍隊はなくても他国の軍備の傘に入っている、軍事的機構の一員になっている、などといったときに「軍隊のない国家」をどう考えるかという問題があるが、このあたりは本書の序章と終章で整理されている。
また、「軍隊のない国家」としてとりあげてはいるが、そう言い切ることに疑問があるときは、その疑問も本文中に書かれている。
内容としては、その国の概要や国の成立過程、憲法の構成についての記述が多く参考になるが、その国に住む人々や政府が軍備についてどのような考え方を持っているのかなどについては、おそらく個人での取材の限界なのだろうが、記述は少ない。
また、それぞれの国をどうとらえるかは、軍備の有無だけではなく、政治や教育、人権や健康など、さまざまな指標によるべきだろうし、そうした点で疑問がある国もまた、存在する。
本書をめぐっては、「軍隊のない国家」は他国に何ら影響を与えない弱小国ばかりである、小国ゆえ守るべきものが少ないので軍隊がいらない、費用的に軍隊を持つことができないから非武装である、実際には大国の保護下にある、などといった指摘が多い。
個々の国の事情を見れば、その批評には当たっているところはあるだろう。
しかし、だからとて「大国」日本に軍隊が必要であると合理化できることにはならない。
むしろ、「大国」日本が名実共に「軍隊のない国家」たらんとする道をどのように現実のものとするかが問われてくるのであって、本書はそのスタート材料を提供したものと言える。
日本国憲法を国民としてどうしていくか、特に集団的自衛権や武器輸出、秘密保護法などをどうしていくのかといった課題が喫緊に迫ってきているとき、繰り返しになるが、憲法を『ぼろ雑巾になるくらい「使う」』ために、本書の意義がある。

序章 なぜ軍隊のない国家か
第1章 隣国には軍隊がない ミクロネシア
 1 史上初の非核憲法 ミクロネシア連邦
 2 親日で知られるパラオ パラオ共和国
 3 ビキニ水爆実験の島 マーシャル諸島共和国
 4 リン鉱石の島 ナウル共和国
 5 最初に夜が明ける国 キリバス共和国
第2章 非核の南太平洋を ポリネシア
 6 非核条約をつくる クック諸島
 7 太平洋の岩 ニウエ
 8 伝統と豊かな自然 サモア独立国
 9 国が海に沈んでいく トゥヴァル
第3章 戦争の記憶をめぐって メラネシア
 10 日本兵餓死の島 ソロモン諸島
 11 女性がつくった憲法 ヴァヌアツ共和国
第4章 軍隊のないイスラム国 インド洋
 12 豊かな虹の国 モーリシャス共和国
 13 100%イスラム教 モルディヴ共和国
第5章 大国の狭間で生きる ヨーロッパ
 14 700年の平和の旅 アンドラ公国
 15 城塞に囲まれた共和国 サンマリノ共和国
 16 煌めく都市国家 モナコ公国
 17 欧州統合の牽引車 ルクセンブルク大公国
 18 君主が軍隊を廃止 リヒテンシュタイン侯国
 19 世界最小の教皇国家 ヴァチカン市国
 20 白夜の国から米軍撤退 アイスランド共和国
第6章 自由と独立を求めて 中米・カリブ海
 21 ハミングバードの聖地 ドミニカ国
 22 二つの革命の記憶 グレナダ
 23 奴隷解放の闘い セントルシア
 24 希望としての光の季節 セントヴィンセント・グレナディンズ
 25 分離独立運動に揺れる セントクリストファー・ネヴィス
 26 運河に翻弄された国 パナマ共和国
 27 軍隊を捨てた国 コスタリカ共和国
終章 憲法第九条を活用するために

前田朗/著
日本評論社

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