« サンダーバード展 | トップページ | バチカン近現代史 »

2013年7月31日 (水)

新訳共産党宣言-初版ブルクハルト版(1848年)

120404_003_1024
しばらくの間つん読状態になってたのだが、ようやく読み終わった
"Manifest der Kommunistischen Partei"は、原著も版を重ね、邦訳も幸徳秋水と堺利彦の平民新聞掲載訳以後、数多く出ているが、本書は、23ページの原著(版によっては30ページ)の新たな訳のほか、解説編、資料編等からなっている。
解説編は「宣言」のセンテンスやパラグラフごとに展開されているが、「解説」となっているかどうかは読者の問題意識によるかもしれない。
資料編に集められたものは、著者の一定の基準によって選択されているが、その基準は「資料編解説」で著者が述べている。

本書の訳が読みやすいかどうか、あるいはしっくりとくるかどうかは疑問である。
たとえば「Assoziation」をどのように訳出するか。
一般的には「共通の目的や関心をもつ人々が、自発的に作る集団や組織。学校・教会・会社・組合など」とされている。

「第二章 プロレタリアと共産主義者」の最後のところ、原文では次のとおりである。
Sind im Laufe der Entwicklung die Klassenunterschiede verschwunden und ist alle Produktion in den Händen der assoziierten Individuen konzentriert, so verliert die öffentliche Gewalt den politischen Charakter.
本書では「こうした発展の中で、階級的相違が消え、生産のすべてがアソシエされた個人の手に集中すれば、公的な力も政治的意味を失う。」とされている。
別の訳は「発展の過程で、階級の際が消滅して、すべての生産が連合した諸個人の手に集積されると、公的権力(ゲヴァルト)は政治的性格を失う。」としている。(服部文男訳・新日本出版社・科学的社会主義の古典選書版/P.86、ちなみに服部訳「共産党宣言」も23ページ本を底本としている。)

ここに出てくる「der assoziierten Individuen」とは何か。
ちなみに、英訳文は以下のとおりである。
When, in the course of development, class distinctions have disappeared, and all production has been concentrated in the hands of a vast association of the whole nation, the public power will lose its political character.
また、この章の最後の原文は、次のとおりである。
An die Stelle der alten bürgerlichen Gesellschaft mit ihren Klassen und Klassengegensätzen tritt eine Assoziation, worin die freie Entwicklung eines jeden die freie Entwicklung aller ist.
これを本書では次のように訳している。
階級と階級-対立をもった旧いブルジョア的生産に取って代わって、アソシアシオンが生まれる。そこにおいては各人の自由な発展がすべてのものの自由な発展の条件となる。

別の訳だと、次のとおりである。
階級および階級対立をもつ古いブルジョア的社会の代わりに、各人の自由な発展が、万人の自由な発展のための条件である連合体(アソツィアツィオーン)が現れる。(服部文男訳・新日本出版社・科学的社会主義の古典選書版/P.86)
英訳文は以下のとおりである。
In place of the old bourgeois society, with its classes and class antagonisms, we shall have an association, in which the free development of each is the condition for the free development of all.

解説編において著者は「アソシアシオン」を「もっとも理解の難しい言葉」とし、「かつては協同組合、共同体などといった概念で説明されていたが、既存の概念では説明できないタームだと思われる」「所有を廃棄した後に出てくる所有そのものを揚棄したもの」と言う。

だとすれば、「アソシアシオン」「アソシエされた個人」と仏語読みカタカナを使った訳文は、ちょっと安易すぎやしないか。
不破哲三は、「『共産党宣言』では、この「アソツィアツィオーン」という用語を、未来社会が国家がなくなる地点にまで到達した状態の表現として使っている」(古典への招待(上)不破哲三/P.197~198)としている。

独語原文は↓

なお、本書をめぐる興味深い指摘が↓にある。

目次
はじめに
凡例
資料『共産党宣言』ドイツ語初版ブルクハルト版
第一編 『共産党宣言』初版ブルクハルト版(1848年23頁版)訳
第二編 解説編
 第一章 ブルジョワとプロレタリア
 第二章 プロレタリアと共産主義者
 第三章 社会主義と共産主義の文献
 1 反動的社会主義
  a 封建的社会主義
  b プチブル的社会主議
  c ドイツあるいは真正社会主義
 2 保守的あるいはブルジョワ‐社会主義
 3 批判的‐ユートピア的な社会主義と共産主義
 第四章 共産主義者のさまざまな対立する党派に対する立場
第三編 『共産党宣言』序文
第四編 資料編
 資料編解説
 テオドール・デザミ『共同体のコード』〔抄訳〕(一八四三年版)
 エティエンヌ・カベー『イカリーへの冒険』〔抄訳〕(一八四八年版)
 ルイ・ブラン『労働の組織』〔抄訳〕(一八五〇年版)
 フローラ・トリスタン『労働者連合』〔解説と抄訳〕(一八四四年版)
 コンシデラン『社会主義の原理─一九世紀における民主主義宣言』〔解説と抄訳〕(一八四七年版)
 『共産主義者の信仰告白』草稿(一八四七年)
 エンゲルス『共産主義の原理』(一八四七年)
 『共産主義者同盟規約』(一八四七年六月に起草された共産主義者同盟の規約)
 イェートレック『プロレタリア階級と真の共産主義による彼らの解放について』(一八四七年)
 『共産主義者雑誌』1号(一八四七年)
 「市民カベーの移民計画」(一八四七年)
 ヴィクトル・テデスコ『プロレタリアのカテキズム』(一八四九年)
第五編 研究編
 第一章 フランス社会主義と『共産党宣言』
 第二章 『共産党宣言』とは何であったのか
 第三章 『共産党宣言』とブリュッセル
 第四章 『共産党宣言』の出版史
あとがき 初版『共産党宣言』の意義
主要な版、翻訳の出版史年表
『共産党宣言』初版成立史年表
マルクス略伝
人名索引

カール・マルクス/著
的場昭弘/訳
作品社

|

« サンダーバード展 | トップページ | バチカン近現代史 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 新訳共産党宣言-初版ブルクハルト版(1848年):

« サンダーバード展 | トップページ | バチカン近現代史 »